検索窓
今日:3 hit、昨日:6 hit、合計:27,227 hit

決断 ページ9





『知ってどうするの』


自分で訊ねておいてあれだが、もし「そいつの身体から心臓を取り出す」なんて猟奇的な返答が返ってきたらどうしよう。やっぱり私はココに心臓を差し出すべきだろうか。


「心臓の音が聞きたい」


『…え、聞くだけ?』


「赤音さんが、今もどこかで生きている、その確証が欲しい。」


九井一という幼なじみは酷く一途な男だった。好いた人のために人生をかけられるほど、その選択をしたのがまだ小学生だったというほど、とにもかくにも恋にまっすぐな男だった。


『(…うらやましいなぁ)』


こんなにも誰かにまっすぐに、死んでもなお、ずっと想われている赤音さんがうらやましい。しかし、そこまで考えると不意に違和感に気がつく。

違う、そうじゃない。

そうなんだけれど、そうじゃなくてー…


『(…ああ、誰かに想われる赤音さんがうらやましいんじゃなくて、九井一という人に想われ続ける赤音さんがうらやましいのか。)』


このタイミングで、恋心を自覚するなんて。私はなんてついていないのだろう。決して報われない恋だというのに。まだ赤音さんが生きていた頃、あんなにも「鈍感なやつ」とココをいじってきた私もまた、そうとう鈍感なやつだったらしい。


ーーけれど、私は今日、この恋心を殺す。胸に秘めるのではなく、しっかりと殺すのだ。私は自分の部屋着のボタンをぷちぷちと解き始めた。


『じゃあ、教えてあげる』


「は、なんで脱ぐんだよ」


慌てて目を閉じるココの優しさが胸にしみる。ココに愛された赤音さんは幸せ者だ。そしてそんなココに恋することができた私もまた幸せ者だ。この恋は、きっと赤音さんが居なければなしえなかったものに違いない。


『…私が昔、倒れたことは憶えてると思う。その後、しばらく入院していたことも。私はあの時ー…』


目を微かに開いたココと目が合う。正確には、あったような気がした、か。ココの視線は私の胸にある手術痕に釘付けになっていたのだから。






『…心臓移植をしたの。』

生と死→←罪の告白



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (128 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
145人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - 胸がキューって苦しくなりました‼︎続編楽しみにしてます!! (2022年3月14日 21時) (レス) @page14 id: 3e56271e58 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 最っっ高でした!!どうか続編をどうか続編をお願いしますッ!! (2022年1月13日 15時) (レス) @page14 id: cc47927cf9 (このIDを非表示/違反報告)
白揚羽(プロフ) - ぴよさん» コメントありがとうございます!!!ただいま執筆中ですので是非…🥰🥰 (2021年12月25日 19時) (レス) id: 54b5eea483 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 続編めちゃくちゃみたいですー!!!!ぜひよろしくお願いします٩( 'ω' )و (2021年12月23日 3時) (レス) @page14 id: 5a0c9ff92a (このIDを非表示/違反報告)
白揚羽(プロフ) - 白さん» コメントありがとうございます…!!!そう言って貰えると本当に嬉しいです…。続編の方も少しずつ進めていけたらと思っています!!ありがとうございました。 (2021年12月21日 20時) (レス) id: 54b5eea483 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:白揚羽 | 作成日時:2021年12月20日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。