恋のドナー【九井一】

手紙 ページ4

＊



そのメモ用紙には｢好きです。｣とド直球な言葉が大きく綴られ、その後に｢もし良ければ電話を下さい｣と続き、最後に差出人のものらしい電話番号が記されていた。

これはもしやラブレターなる物なのだろうか。私の知っているものとちょっと違うけどたぶんそう。

しばらくしげしげとその紙を見つめていると、中々来ないことを不審がったのかココがやってくるのを感じた。


｢なんかあった…って、どうしたんだそれ。｣


『んー…ラブレター？』


｢…それ、電話すんの？｣


『いや、別にしないけど』


手を出されたので反射的にその手のひらに拾い上げた紙を置く。それがいけなかったのだろう。｢だよな｣とココは一言呟いて、瞬く間に紙をびりびりに引き裂いてしまった。
ラブレターから紙くずに早変わりしてしまったそれを、ココはなんのためらいもなく近場のゴミ箱に投げ捨てて、行こうぜ、ときびすを返す。


『ちょ、ココ！なんで！？』


｢いらないんだろ、あれ。ならわざわざ保ってる必要ねぇだろ。｣


確かに、ココの言っていることはもっともだが、納得できない。私になんの了解もなくびりびりにして捨ててしまったところとかが特に気に食わない。


『…人生初ラブレターだったのに』


思わず不満の声を零せば、ココはふと足を止めてこちらを振り返った。


｢そんな不服なら、ラブレターなんか俺が何枚でも書いてやるよ｣


『そう言うことじゃないんだけど…まあいいか』

苦難→←日常

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す