episode34 ページ34
6月の始まりは雨だった。
梅雨前線がじわりじわりと北上し、つい先日兵庫も梅雨入りとなった。
今日行われるはずだった体育祭の練習は中止となり、代わりに授業をすることになったため、クラスの雰囲気も空模様と同じでどんよりしていた。
しかし、今から行われるはずだった数学の教師が今日は休みらしく、6限目は自習だと伝えられるとクラスの雰囲気は一変して騒がしいものとなった。
みんなが話したり、自由な事をし始めたけれど、私は特にすることも無くて
寝ようと決めると直ぐに机に顔を伏せた。
窓際の席だからか、雨の降る音がよく聞こえた。雨の音はうたた寝の子守唄にはちょうど良かった。
「なんや、九条寝てまうのか」
頭の上から誰かの声が聞こえて、伏したまま声をかけた。
『なにぃーだれぇー』
「誰やと思う?」
再び聞こえたその声に驚いて体を勢いよく起こした。
目の前の席に座ってこちらを見ているのは、どう見たって北くんだった。
『え、なんで?前田さんは?』
前田さんとは私の前の席の女の子。
すると北くんは本来の自分の席を指さした。
そちらに目を向けると、そこで楽しそうにお喋りをする前田さん。
「前田、九条が寝て暇そうやったから場所入れ変わった」
それは、申し訳ないことをした……
『そっか、北くんは今から自習するよね…えらいな』
「いや、そうでもないで」
ん?と思って首を傾げると北くんは笑って言った。
「俺、起こす気満々で席移動してきたから、自習道具持ってきてへんよ」
何が言いたいかというと、笑顔が100点である。
それから言動が天使である。
つまり、私と話す気で移動してきてくれた……?
『そういえば、北くんに言われて起きなかったことないかも』
「せやろ?得意やねん、九条起こすの」
「久しぶりに前後でお喋りでもしたいなあ思うて、前田と席変わってん」
そんなこと言われたら眠れるはずもない。
やっぱり北くんには適わない。
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赤羽 - うわああああこれ好きすぎる (4月8日 23時) (レス) @page50 id: b22b7ccd76 (このIDを非表示/違反報告)
mia - 侑切ない…(´TωT`)侑とくっついて欲しいけど、北さんともくっついて欲しい…続き楽しみにしています!!これからも頑張って下さい!! (2020年3月24日 11時) (レス) id: 3bb55163e6 (このIDを非表示/違反報告)
もちねこ(プロフ) - りおなさん» いつもコメントありがとうございます!長編となりますが最後までお付き合いよろしくお願いします (2020年3月18日 0時) (レス) id: bf7fa3a49d (このIDを非表示/違反報告)
りおな(プロフ) - 今回もドキドキをありがとうございました…文化祭編も卒業編も楽しみにしてます(T_T) (2020年3月17日 0時) (レス) id: 3541b5b7c1 (このIDを非表示/違反報告)
もちねこ(プロフ) - 輝星さん» そんな風に言っていただけて光栄です…更新頑張らせていただきます! (2020年3月16日 1時) (レス) id: bf7fa3a49d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もちねこ | 作成日時:2020年2月17日 18時