【宮侑】後輩に弱みを握られた【北信介】

episode33 ページ33

宮 侑 side








5月の始め。






部活が始まるまでに時間があったからクラスメイトの数人と水を掛け合って遊びよった。










それを体育教師に散々怒られて、別にええやんか減るもんやないし！と、みんなで愚痴言いながらそれぞれの部活に向かおうとしとった時












3年生の教室からこっちを見とる、綺麗な女の先輩と目が合った。























あ、Aさんや
















窓が開いてて、栗色の柔らかい髪が靡いて




微笑みながら俺に向かって手を振った。
















ﾄｸﾝｯ と脈が波打つ














毒舌だったり、警戒心強かったりするけど




たまに見せるあの優しい笑顔はほんまに綺麗で。














嬉しくて思わず笑みが溢れて、今までの不愉快やった気持ちもすんなり晴れて、手を振り返した。













また今日も部活を頑張れる気がして、弾んだ気持ちで体育館に向かった。









































そこで終わっとけば、"1つの素敵な思い出" で終わってたんやけどなあ。






































もう一度振り返ったのが間違いやった。





もう一度目が合うかもなんて、変な期待するんやなかった。






















もう一度振り返った時に見えたのは北さんと話しとるAさんで







俺と話しとる時には見せない満面の笑み。




















見なければよかった。








激しい後悔に襲われて体育館まで走った。




































全速力で体育館の前まで来ると急に力が抜けて、その場に座り込んだ。













走ってきたせいで動悸を感じて、





でもそれとは違う意味で上がった心拍数、ズキズキと痛む感情に嫌気がさす。






















あかん、抑えなあかん







期待もあかん







高望みもあかん















だってAさんは北さんのことが好きなんや、 北さんには勝てへんやろ、Aさんの北さんに対する気持ちに俺が入る隙間なんて残ってへん




ちょっと微笑みかけられた位で自惚れんなや




Aさんにとっての俺はただの生意気な後輩なんや



























Aさんのこと考えると苦しくて、でもそれ以上にあったかい気持ちになって
























こんなこと考えてる時点で、俺はもうとっくに








自分の気持ちに気がついとる癖に。

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