【宮侑】後輩に恋路を邪魔される【北信介】

episode7 ページ8

4人で放課後に残って勉強するのが最後となった今日。







『これa=bだから、ここの計算式間違ってるよ』


「んーっと…あ、ほんまや。で、ここを二乗したらええんか」





隣に座る治くんは要領が良く、多少の計算間違いはあっても基本は出来ている。応用問題も部分点なら取れるレベルにまで上がってきた。









問題は片割れ。


少し離れた席で北くんにマンツーマンで叩き込まれている侑くんは数学に苦手意識があるらしい。不安しかない。









人に教えるのは思っていたよりも難しくて、それに加えて自分の勉強もしなければならない中、北くんはそれを完璧に両立している。本当に隙がないというか、非の打ち所がないというか。



同級生の私でさえ尊敬してしまう。



















「体育祭以降、ツムはまたご機嫌やで。借り物競争でツム呼び出した甲斐があったわ」








問題集を解き終えた治くんは、北くんや侑くんに聞こえないように私に話しかけてきた。









『おかげさまで仲直りできたよ、迷惑してる部分もあるけどね』




「俺もその噂聞いたで、ツムと付き合うてるって」









治くんはその噂がデマだと分かって茶化してくる。さすが双子、性格の悪さから遺伝子を感じる。



まあ治くんのおかげで、気まずい雰囲気だった侑くんと仲直り出来たのは間違いない。一応感謝はしている。

























「でもまあ、仲直り出来たんは俺のおかげやなくて北さんのおかげやけどな」




『……え？』









治くんは北くんに聞かれていない事を確認すると、小さな声で話を続けた。



















「体育祭前日にな、ツムとAさんが話すきっかけ作ってやって欲しいって頼まれてん。ツムも当日に北さんに何か言われたらしいで」






















北くんが、きっかけを作ってくれてた……？












言われてみれば、私も同じような体験をした。


私が侑くんに話しかけることができたのは、北くんの"真っ向勝負"というアドバイスがあったおかげだ。









彼は本当に人の事をよく見ている。知らないところで私と侑くんを仲直りに導いてくれたのは北くんだった。









思わず頬が緩む。













「北さん、稲荷崎のオカンやからな」



『……オカン、確かに』







クスクスと笑ってしまった私たちは、その後北くんに怒られる。















そして期末テストは最終日を迎えた。

episode8→←episode6

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す