【宮侑】後輩に恋路を邪魔される【北信介】

episode13 ページ14

8月上旬の土曜日








今日、侑くんと花火大会に行く。











侑くんは今日も朝から部活らしい。インハイまで残り2週間だそうだ。









18時に駅前で待ち合わせ



そんな約束をしてから何となく落ち着かない。









侑くんと2人というシチュエーションは別に新鮮な感覚ではないけれど、学校と駄菓子屋以外で会うのは今日が初めて。


















……これはデートじゃない。





そう何度も自分に言い聞かせる。









今更ながら、花火大会に行くことを了承してしまった自分に腹が立つ。思わせぶりな態度は良くないし、侑くんのペースに持っていかれるのは目に見えている。







ため息をつきながらもお気に入りのワンピースに袖を通している自分にもまた腹が立つ。











これは違う、デートじゃない。いつもの駄菓子屋と一緒でただの親睦会。























そわそわしている自分を落ち着かせるために部屋の片付けをしていれば、気がつけば夕方。













『じゃあそろそろ行ってくるね』








両親共働きの私の家に、今日は大学生の兄1人。


兄も中学からバレー部、今でも続けている。









「あー花火大会か。あれだろ、高校ナンバーワンセッターの宮侑と。」









兄は読んでいた月バリを閉じて私を見る。


















「デート、楽しめよ？」















にやにやしている兄にも腹が立つ。











違う、これはデートじゃない。





サンダルを履きながら、駅に向かいながら、侑くんを待ちながら、何度も何度も言い聞かせる。































「Aさん待たせてもうた、ほんま堪忍なあ」


















5分遅れで侑くんが待ち合わせ場所に着いた。部活の練習着のままだった。部活帰りにそのまま来たのだろう。

















『……別に、大丈夫』






何となく顔を見れなくて、言い方も可愛げがなくて。


あーどうしよう、余裕が無いのバレる、嫌だ。








そう思ってもやっぱり侑くんの顔を見れない。


















そんな私の様子に気がついたのか


侑くんは少し屈んで私の顔を覗き込んできた。



























「休日デートやな？」
















意地悪に笑う侑くんにも腹が立つ。
















違う、これはデートじゃない。



そう言い返せない程に余裕がない自分にも、腹が立って仕方がない。

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