◎ 歌舞伎 ページ14
〔 kj 〕
「ねえ、Aが来てるんだけど！」
……嘘やろ、絶対に嘘やん。
さっくんの一言で、近くにいたメンバーが集まる。
「え？何？佐久間今なんて言った？」
「だから、Aが客席にいるんだって！」
「は？そんなわけないじゃん。」
「いや、あれは絶対Aだよ！」
舞台裏、パニックになるメンバー。
もちろん、俺の頭の中も真っ白。
たむちゃんのせいで台詞飛んだらどうしてくれるん？
たむちゃんは今まで、この舞台を見に来ることはなかった。というか来たくなかったんだと思う。だから、メンバーからは誘わん。というか、
誘えんかった。
さっくんが、だいすきなたむちゃんと別の誰かを見間違えるわけがないんよ。だからそこ、びっくりしてる。
……しょっぴー風に言うと、パニックパニック、やな。
舞台に上がれば、演目に集中しつつも、
さっくんの情報を頼りに、
たむちゃんの姿を探してしまった。
……うわ、ほんまや。
白いワンピース、
ふわりと巻かれたセミロングの髪、
客席で一際放たれるオーラ。
たむちゃんが、この場所に居る。
それだけで、胸がいっぱいになった。
他のメンバーもきっと同じ気持ちやったと思う。
9人が揃って舞台に立つ時、
みんなが目を潤ませていた。
俺？俺は、号泣です。涙活。今日は許されるやろ。
……全部たむちゃんの、せいやから。
なんて。
たむちゃん、
1歩、俺らのもとへ、歩んでくれてありがとう。
舞台から注がれた視線で分かったやろ？
みんなたむちゃんが大好きで、大事やから。
離れていたってひとりじゃない。
孤独感じる必要なんかない。
な、そうやろ？ちゃんと、伝わった？
続く
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作者名：は む | 作成日時：2023年3月5日 3時
