サイテイ《そらちぃ》 ページ7
"ウチで飲まない?"
そう、彼からメールが入ったのはついさっき。
10時を少し回った頃だった。
こんな夜遅くに、男が女を家に呼ぶなんて、理由は決まってる。
それを私はよく分かっていた。
でも、足は彼の家へと進む。
インターホンを押せば、しばらくしてドアが開いて、"いらっしゃい"なんて。
そんな素振り全く見せないで優しく微笑むから、私はつい、見とれた。
「何飲む?」
「んー、ビールでいいよ」
冷蔵庫から缶ビールを二本出して、戻ってきた彼に"ありがとう"と、微笑めば、"いーえ"なんて笑って一本差し出す。
(あぁ、やっぱり私は、彼の笑顔には敵わないわ)
だって彼の笑った顔は、純粋無垢で、人懐っこくて、私が知ってる彼とは違うから。
(他の子には、いつもこんな顔してるのかな)
嫉妬なんて醜いから、これは嫉妬じゃないことにしよう。
冷えた缶を空ければ、プシュッと爽やかな音が耳に残る。
私達二人には、この音は似合わない。
だって…
「A」
「…ん?」
彼の腕が、私の方を掴む。
ビクリ、と肩を揺らせば、"今更緊張してるの?"なんて、いつもは見せないような笑み。
「それとも、罪悪感?」
これが、私の知ってる彼の顔。
皆が見てる彼じゃない、本当の彼は、
ずるくて、意地悪で、残酷だ。
「ねぇ、嫌だ」
顔を逸らすと、スクスクと笑い声。
(あぁ、嫌いだ。)
この笑い声が耳障りで仕方ない。
「もうやめよ、そら、彼女いるじゃん」
違う。
本当は、
(会ったら飲んで、デキそうな軽い女に見られたくない)
特に、彼には。
(でも私は、今日もまた、来てしまった。)
結局は、彼の事が好きでしかないんだ、きっと。
「男はね、好きじゃなくてもキスできるんだよ」
あぁ、本当、
今まで出会った中で、
一番、
「最低」
今日もまた、君に溺れて、堕ちる。
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クロハ(プロフ) - ありがとうございます…最高です… (2017年8月7日 14時) (レス) id: 6a4238f2b9 (このIDを非表示/違反報告)
ゴリラ - ありがとうございます(´;ω;`) (2017年8月4日 18時) (レス) id: 874f7f8e04 (このIDを非表示/違反報告)
瀬名(プロフ) - クロハさん» わかりましたー! (2017年8月4日 15時) (レス) id: b502a9e7b5 (このIDを非表示/違反報告)
クロハ(プロフ) - またまた失礼します(*´-`)エイジ君で甘めなのお願いできますか? (2017年8月4日 2時) (レス) id: 6a4238f2b9 (このIDを非表示/違反報告)
瀬名(プロフ) - 翡翠さん» 本当ですか!そういっていただけて嬉しいです。これからも応援よろしくお願いします! (2017年8月1日 20時) (レス) id: 60b5c0e445 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀬名 郁 | 作成日時:2017年4月7日 21時