ショコラトール《はじめしゃちょー》 ページ12
「俺もチョコ欲しいなぁ」
「どうせ貰ってるくせに」
「あ、バレた?」
(うぜぇ……)
口には出さないけれど、心の中でその単語を連呼した。なんともムカつく顔をして、こちらを見る彼を睨み返す。
「はぁ、なんでアンタがチョコ貰えんのかなぁ」
「俺がカッコイイからさ」
自信満々にそう言う彼に、"馬鹿じゃないの"と言い放って、溜息一つ。
「んじゃ、はじめにチョコをあげる女の子は、本当のはじめを分かってないんだなぁ〜
だってさ、ひ弱だし、だらしないし、頼りないし、あともやしだし。
どこがいいんだか。」
「ちょっと待って、もやしは違くない!?」
すかさず突っ込んでくる彼に苦笑しつつ"だって事実じゃない"と返すと、"うっせ!"って怒られた。
「でも、」
「でも、なに?」
「なんでもない」
"でも、優しいよね"
そう言おうとして、やっぱやめた。
気になるじゃんか、なんて私の肩を揺らす彼を無視して夕日に目を細めた。
「あ、Aも手伝ってよ、チョコ食べんの。」
私の顔を覗き込む彼を押しやって、
「やだね」
(人の気持ちも知らないで。)
なんとデリカシーがない奴なんだ。
へらへらと浮かれ気味のそいつを、一発殴りたくなった。
「チョコレートの語源って知ってる?」
「え?」
首を傾げる彼を横目に、私は続けた。
「ショコラトール」
「意味は、苦い水」
「チョコは甘いよ?」
アホくさい返答をする彼の顔は、真面目そのものだったものだから、つい笑いが零れる。
「まぁ、そうなんだけどさ、
"苦い水"って、チョコって言うよりも、女の子のことだと思うの。」
「女の子は、チョコレートなんだよ。
甘くて、繊細で、ちょっぴり苦い。」
「そっかぁ……」
「はい」
彼に、小さな箱を手渡す。
「えっと、」
「勘違いしないでよ、誕生日プレゼントだから。」
恥ずかしくて、目を逸らす。
明らかに動揺を隠しきれない彼に、
"そのチョコ、ニガリ入だから"
べぇ、と舌を出して走り出す。
夕日が目に染みる。
目の前がぼやけて、周りがよく見えない。
だけど走った。
息が切れて、胸が苦しかったけど、走った。
私の気持ちに気づかない君は、きっとあのチョコレートを美味しく食べるだろう。
「……甘いじゃん」
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はじめくんお誕生日おめでとう!
紫《トミー》→←声とか、歌とか、《ぺけたん》アミノ酸@ウオタミさんリク
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ボン人.おるたなー - あ!水溜りボンドだー!嬉C超えの嬉Dー!! (2017年8月11日 10時) (レス) id: eebcc8fec2 (このIDを非表示/違反報告)
郁(プロフ) - 鈴さん» そらちぃですね!!了解しました! (2017年4月4日 15時) (レス) id: b502a9e7b5 (このIDを非表示/違反報告)
鈴 - いつも小説見てます! リクエストなんですけど…そらちぃでSになるやつお願いします。 (2017年4月4日 15時) (レス) id: 7693f00e69 (このIDを非表示/違反報告)
郁(プロフ) - 雪丸さん» はじめくんですね!!お好みのシュチュエーションなどはありますでしょうか!? (2017年4月4日 13時) (レス) id: b502a9e7b5 (このIDを非表示/違反報告)
雪丸 - はじめしゃちょーのやつ沢山みたいです! (2017年4月4日 13時) (レス) id: aeb3e095eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:郁 | 作成日時:2017年2月4日 21時