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「泳ぎたいんだけど、怖いんだよね。」
ポツリ、本音を吐き出した。
「なんで」
シルクは校庭の方に目を向けたまま、私に問いた。
「5ヶ月もブランクがあるんだよ?
全部忘れちゃったかもしれない。泳ぎ方も、水の捉え方も、全部。」
「なら、もう1回覚え直せばいいじゃん。」
「そんな、簡単に感覚が戻るもんじゃないよ。」
1度感覚を忘れてしまうと、前のように泳げる様になるにはかなり時間がかかると、先輩から聞いた覚えがある。
「引退までに、間に合わないかも知れない。
今まで、頑張ってきたのに……」
頬から落ちる冷たい雫が、プールサイドに黒い染みを作っていく。
「だったらその分、努力すりゃいいじゃん。」
「ゆっくりでもいいじゃん。いくら時間がかかったとしても、自分の納得のいく泳ぎが出来るようになるまで練習すればいいじゃん。」
"な?"と口角を上げてこちらを見るシルク。
「そうだね、そうかもしれない。」
私も真似して口元を緩めた。
「お前って、金魚みたいだよな。」
「えー?」
何のことやら、と笑ってみせると、
「小さな水槽の中でも、懸命に泳いでてさ、
金魚って、なんか綺麗なんだよな。」
「お前に似てる」
そう言って立ち上がる。
「だからさ、頑張れよ。
俺、お前がまた泳いでるとこ見たいよ。」
"ん、"と伸ばされた手を取る。
「そっか、」
彼に引かれるがままに、プールから足を抜いた。
「ありがとう……
って一応言っとく。」
「なんだよそれー」
もし、また私が立ち止まったら、
貴方はまた手を引いてくれる?
前を行く背中に、そう問いかけた。
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吉田(プロフ) - ハム太郎さん» りょーかいです!遅くなってしまうかも知れませんが、書かせていただきます! (2017年1月30日 0時) (レス) id: 93b652cbb9 (このIDを非表示/違反報告)
ハム太郎 - 突然リクエストすみません!ダーマ君のツンデレと、ちょっとした口喧嘩みたいな感じお願いします! (2017年1月24日 23時) (レス) id: 0d5f2094d5 (このIDを非表示/違反報告)
吉田(プロフ) - くるみんさん» 読んでいただきありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです……!!また是非よろしくお願いします! (2017年1月19日 18時) (レス) id: e763583aca (このIDを非表示/違反報告)
くるみん(プロフ) - きゃぁぁぁぁぁ!ありがとうございます(泣)めちゃくちゃキュンキュンしましたリクエスト答えていただけて嬉しいです!またよろしくお願いします!つぎの更新楽しみにしてますね (2017年1月19日 18時) (レス) id: 17d8573057 (このIDを非表示/違反報告)
吉田(プロフ) - kinoさん» わぁぁぁ……!!いつも読んでいただき誠にありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです……メンバーさん一人一人個性豊かなので、それを出して行けたらなと思っています。 (2017年1月19日 0時) (レス) id: 93b652cbb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:郁 | 作成日時:2016年12月26日 0時