▽谷口 ページ29
東京の空は星が見えない。
誰かがそんな事を言っていた気がした。
息が詰まりそうな都会の幻想。
なんとなく外に出たくなって、
吐き出したい気持ちを背負って、夜道を一人歩いていた。
照らすのは所々にある電灯と月明かりだけ
9月の涼しい風が頬をなでる
「あれ、ほのか？」
どこからか聞こえた声
私はその声に聞き覚えがあった。
「まぐちゃん？」
振り返ると案の定、声の主である谷口鮪が立っていた。
「こんな夜遅くにどうしたの？」
「ほのかさんこそ、こんな夜道におひとりですか？」
"ちょっと夜の空気吸いたくて"、
そう返すと君は何も言わずに私に並んで歩き出した
「せやけど、こんな夜遅くに1人は危ないで」
「うん」
「最近物騒やし、襲われたらどうすんの」
私がないない、と笑うと君は「俺だって男やで？」なんて、いつも言わないようなこと言うから、胸がむず痒くって空を見上げた。
「星、やっぱ東京じゃ見えないのかな」
何気なしに呟いた言葉に彼は、
「見えるさ、俺知ってるよ？連れてってやろうか」
私はこくりと頷いた
それから数分
「着いたで」
少し先を行く彼は私の方に向き直ってそういった。
少し小高い丘のような開けた場所
そこには東京では見られないはずの星空が広がっていた。
「綺麗……」
ぽろりと出た言葉
一緒に涙も出そうで、ぐっと我慢する。
「あ、あれ一番星ちゃう？」
彼が指さした先を見ると、
一つだけ他よりも輝いた星があった。
隣にいる彼のように。
「なんかあんならさ、俺話聞くよ。
少しは頼ってや。」
心の中を覗かれてしまったのかと思うような彼の言葉に少し驚いたけど、
「ありがとう」って呟いた。
こんなふうに彼と星を見ていると
今まで溜め込んできた感情とか、
未来への不安とか、
全部星空に溶けてなくなってしまいそうな、
そんな気がした。
未来がどうとか、どうでもいいとか吐き捨てて、
ただひたすら今をもがいて、足掻いて生きていくんだ。
澄んだ空気をすぅっと吸った。
貴方はどの星よりも輝いていた。
東京でも、星は見えるらしい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 64人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アソパソマソ - 古賀さんが告白するのを読みたいです。 (2017年7月29日 12時) (
レス) id: a0dcacaca2 (このIDを非表示/違反報告)
首藤(プロフ) - リクエストありがとうございました！！文章まとまり無さすぎてすみません……読んでいただきありがとうございました！！ (2016年11月17日 19時) (レス) id: e763583aca (このIDを非表示/違反報告)
すずめ(プロフ) - リクエスト書いていただき本当にありがとうございました！とても感動しました…( ´^`° ) (2016年11月17日 18時) (レス) id: 4c26696416 (このIDを非表示/違反報告)
首藤(プロフ) - あっぷるさん» リクエスト誠にありがとうございます！書かせていただきますね！ (2016年11月13日 22時) (レス) id: e763583aca (このIDを非表示/違反報告)
あっぷる - 義勝が、彼女とデレデレしてるのを読みたいです！笑 (2016年11月13日 22時) (レス) id: 2783465865 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：郁 | 作成日時：2016年10月12日 18時
