鏡花水月

ライブハウス2(義勝said) ページ3

「おつかれーっす」

ライブが終わったのにもかかわらず滲み出る汗を、首にかけたタオルで拭いながら、メンバーと共に楽屋に戻る。

(今日も、いた)


八「今日もいたね〜〜、あの子」
義「……!?」


まるで俺の心を読んだかのように、にやけ顔でこちらを見る八木氏に「うっせ」と睨み返して、机の上に並べられたペットボトルに手を伸ばした。


八「あ〜〜、よっちゃん照れてる〜〜」
義「違うから」
八「きぃーーーー!!八木子という存在がありながら〜〜〜!!!」
巨「八木氏うるせー」

(サコ、ナイス)

絡みつく八木子の腕を振り払いながら、乾いた喉に冷えた液体を流し込んだ。




"あの子"と言われて、心当たりが無いわけでもない。

いつも俺達のライブに来てくれる子。
よく俺の前にいるから、顔もなんとなくだが覚えてしまった。


八「いいな〜、よっちゃんには可愛いファンの子がいて…!!!」
義「だから、違うって…」
武「義勝は素直じゃないな〜〜、本当は嬉しいくせに〜〜〜」
義「俺、煙草吸ってくる」
巨「あ、逃げた」



うるさい楽屋を後にして、外に出る。
すっかり秋めいた風が身体を吹き抜けた。

ポケットから一本取り出して口にくわえる。

それに火をつけようとした時、






＿＿「あの、義勝さんですか?」

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