車内にて ページ12
「Aちゃんは俺の隣ね」
ポンポンとシートを叩く八木さんの隣、少し間を空けて座る。
巨「んじゃ、俺もAちゃんの隣に…」
「巨匠はいつも助手席だろ」
ノリノリで車に乗り込もうとした寺中さんの肩を掴んだのは、義勝さん。
「俺にも隣座らせろー!」と喚きながらも、渋々助手席に座る寺中さん。
運転席の武正さんに何やら文句を言っているみたいだが、義勝さんはそんなこと気にもとめていないような、平然な顔をして私の隣に座った。
義「悪いけど、もう少し詰めてもらえる?」
「あ、ごめんなさい」
八木さんとの間に空けていた間を詰めると、
八「よっちゃん、もうちょっと優しく言ってあげなよー」
私を庇うように八木さんが肩を引くから、一気に二人の距離が近づいて心臓が飛び跳ねる。
頬が火照って、鼓動が加速する。
この間と、
八木さんに手を握られた時と、同じ感覚。
胸のあたりがむず痒くって、ちょっと苦しい。
不思議な感覚。
(この人はきっと、私がこんなにドキドキしてる事にも気づいてないんだろうな)
義「そんなの、お前には関係ないだろ」
冷え切った彼の声をかき消すように、「出発しますよー」という武正さんの明るい声が前から聞こえて、慌ててシートベルトを締めた。
揺れる車内、ぶつかる肩と肩が熱い。
まるで、全神経が肩に集中しているかのように、いちいちドキドキしてしまって、打ち上げのお店に着くまで心臓が持つか不安なくらいだった。
八「ねえ」
私にしか聞こえないような小さな声で、八木さんが声をかけてきた。
「なんでしょう」
念のため、私も八木さんにしか聞こえないくらいの声でそう返した。
八木さんが、耳元に口を近づけて囁く。
八「この前の約束、覚えてる」
「約束、ですか」
八「次会った時に連絡先教えてくれるってやつ」
「ちゃんと覚えてますよ」
そのために来たと言っては言い過ぎかもしれないが、あらかた間違いではない気もする。
八「じゃあ…」
「いいですよ」
八「やった」
私がポケットから携帯を取り出すと、八木さんは嬉しそうに笑った。
八「これで、いつでもAちゃんと連絡取れるね」
私はなんだか照れくさくて、「そうですね」とだけ返して目を伏せた。
武「もうすぐ着くよー」
巨「よっしゃ、今日は飲むぞー!」
八「サコ、あんま飲みすぎんなよー」
騒がしい車内。
楽しげな会話。笑い声。
なんだか”今”がすごく楽しくって、そっと頬を緩めた。
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かがり - すごくドキドキします! (2018年5月14日 22時) (レス) id: 54ed562f4c (このIDを非表示/違反報告)
りー - 楽しませてもらってます!! (2018年1月14日 0時) (レス) id: 09856dbee7 (このIDを非表示/違反報告)
りー - いえいえ!! (2018年1月13日 23時) (レス) id: 09856dbee7 (このIDを非表示/違反報告)
瀬名(プロフ) - りーさん» コメントありがとうございます!!!そういったお言葉とても励みになります!!!頑張ります!!! (2018年1月3日 15時) (レス) id: b502a9e7b5 (このIDを非表示/違反報告)
りー - めっちゃ面白いです!更新楽しみにしてます! (2018年1月3日 15時) (レス) id: 09856dbee7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:郁 | 作成日時:2017年10月24日 23時