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「それで、順平とさ見た映画が―、」



鍛錬終わり、悠仁が楽しそうに順平という人間の名を口にした。楽しそうだったのでそのまま静かに相槌を打ちながらその話を聞いてくる。



映画館の変死事件の関係者として調査に当たっていたが、霊呪が見えるだけでただの映画好きだったと。



悠仁とも趣味が合い、今日はその子の家で母親と一緒に夕食を共にしてきたらしい。



今まで数か月間人との交流が限られていたせいか、その顔は生き生きとしていて、満足げなものだった。




「そう、それは良かったわね。」
「そ、順平も高専来たらいいのにな。学校あまり行けてないみたいだし。」



悠仁が楽しそうに想像を膨らませるのを端に、果たして、その順平という人間は明日まで生きているだろうか。



だなんて残酷なことを考えてしまう。なんだか茶番めいたものを感じながらも、私はニコリと悠仁に笑った。



<><><><>



いつも通りの放課後、彼は任務で出ているからいない。悠仁は彼の後輩の術師と一緒に任務へ行っているから、私は何をするでもなく誰もいない教室の座り心地の悪い椅子に行儀悪く座っていた。



「真祖。シカマ・ドゥ。愛しのお父様。貴方はどうして、」



私を欺き、こんなにも醜くした?声には出さずに心の中でどうすることもできない問いを誰かに問いかける。



「あは、随分人間的になったものね。」



絶望という感情に常に浸っている吸血鬼は、それが日常で。それが普通。故に、それ以外の感情は持ち合わせない。



無意識にガリ、と耳を塞ぎたくなるような音が出て、自分の鋭く尖った爪が首を抉っている事実を知った。



頸動脈を切ってしまったのか、トクトクと穏やかな音が首から奏でて大量の血が衣服に滲んでいく。傷はすぐに塞がったが、渇きが酷かった。手に視線をやると紫の紋様が浮かび上がっている。



それほど出血量が多くなっていたことを、今になってやっと気づいた。今すぐにではないが、このままでは鬼になってしまう。



恐らく、顔にも紋様が浮かんでいるだろう。



「やば、」



体を引きずるようにして、壁伝いにずるずると廊下を歩く。人間の血は自分の部屋か、医務室に行かなければない。



そして今の状況を考えると、必要な血液の量的に医務室へ行かなければ。その辺の人間の血を吸って、加減できるような状況ではない。




息も途切れ途切れに、私は医務室を目指して歩いた。

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Reina(プロフ) - ゆきさん» ありがとうございます!私生活の方が忙しくて中々時間が取れなかったのですが、そう言っていただけるととても嬉しいです。頑張ります! (2021年10月24日 19時) (レス) id: b4ccc6a785 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 更新お久しぶりです!もう更新しないのかなぁと少し不安になってましたがありがとうございます!ほんとにこの小説面白くて大好きです!無理だけはせずにこれからも頑張って下さい! (2021年10月24日 3時) (レス) @page26 id: 9bb0d4787d (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - いつも楽しく拝見させていただいております。更新を楽しみにしてお待ちしております!頑張ってください! (2021年7月18日 17時) (レス) id: e5f7c718e0 (このIDを非表示/違反報告)
Reina(プロフ) - れんさん» ありがとうございます (2021年5月25日 16時) (レス) id: b4ccc6a785 (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - ご対応頂きありがとうございます!これからも更新楽しみにしております。季節の変わり目ですのでお身体にはご自愛くださいませ。 (2021年5月25日 1時) (レス) id: cf8acd5d9f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Reina | 作成日時:2021年2月11日 2時

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