午前5時半 ページ40
「Aさん！！」
しわがれた、それでいて鋭い声で名前を呼ばれ、身体全体が魔法にかかったように硬直する。
呼吸さえ許されないような……時間が止まったような感覚がしたが、相変わらず蓄音機から流れ続ける音楽が、全て錯覚であることを物語っていた。
「俺らの話も聞いてくれよ！」
目を閉じ、眉間に深い皺を寄せたケトルさんの両脇で、兄弟が大きい目を更に見開いてこちらを見ている。
悲しんでいるのか、怒っているのか……。戸惑いを隠せないような彼らの表情を見ると、たった今自分が何を口走ったのかを思い知った。
「あっ……」
後悔の念が激流のごとく押し寄せる。
やかましく早鐘を打つ胸の鼓動が耳まで届き、同時に冷や汗も滲んでくる。まるで濃い霧に飲まれるように、次第に視界がぼやけだした。
そして……
「A！！」
急速に全身の力が抜け落ち、まぶたが重くなっていく……この感覚は初めてではない。
既に、呼び掛けに答えることもできなくなっていた。
……
目覚めた場所は寝室ではなく、居間のソファの上だった。
風呂上がりにここでうたた寝をして、そのまま本格的に眠り込んでしまっていたようだ。
昨夜、朝になるまで寝付けなかったせいなのもあるだろうが、何より……自室には、あの紙が放置されたままになっている。
手元にあるという事実に目を背けたいが為に、無意識の内に、自室に向かうことを拒んでいたのかもしれない。
「うぅ……」
頭を抱えると、我ながら悲痛な声が出た。直前まで一緒に居たあの三人の表情が、まぶたの裏に浮かんでいる。
(私の馬鹿！！どうしてあんな無茶苦茶な事を……！！)
思い返してみると、八つ当たりにも程がある。
もし兄弟が誘わなかったとしても、いずれにせよ悪魔達と出会っていたことに変わりはないのだから、私に二人を責める権利など全く無いというのに。
真っ暗なテレビ画面に、ボサボサ髪で寝間着姿のだらしない自分が映っている。なんとも酷い顔で、憎たらしいとさえ思えてきた。
自責の念が強まり、それが己に対する悔し涙としてポロポロ溢れてくると、気持ちは更に加速した。
結局、間もなく起床してきたお母さんに驚かれるまで、泣き通しだった。
「ちょっと嫌な夢を見ただけだよ」
お母さんには、そうとだけ説明した。
本気で「夢で良かった」と思えたなら、どんなに気が楽だっただろう。
今はただ赤い目を擦りながら、お母さんお手製の味噌汁の具をぼんやりと見つめることしかできなかった。
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マーシャ - cuphead夢小説の中でも原作の世界観が良く感じられ、素敵な作品だと思っています。何年も更新が停止されていますが、この年でも私のように読んでいる者が居ることをご報告したいです…！いつか更新再開されることを願います (4月18日 18時) (
レス) id: bebb921341 (このIDを非表示/違反報告)
とまとたらこ(プロフ) - ウサリボンさん» お返事が遅れてしまい申し訳ありません。今後の展開は未だに推敲中ですが、更新はいずれ必ず致しますので、長い目で見守っていただけると幸いです。暖かなコメントをありがとうございます。頑張ります! (2018年10月30日 17時) (レス) id: 9b699bce75 (このIDを非表示/違反報告)
ウサリボン - とまとたらこさん» 面白かったです。更新再開する事を願います。 (2018年10月24日 23時) (レス) id: 184a8843bf (このIDを非表示/違反報告)
とまとたらこ(プロフ) - やみなーさん» ありがとうございます！！！好きと言っていただけてとても嬉しいです……モチベーション上げて頑張ります！！ (2018年4月12日 23時) (レス) id: 9b699bce75 (このIDを非表示/違反報告)
やみなー(プロフ) - ｱｯ…すごい好き…(語彙力) 続き楽しみにしてます！ (2018年4月12日 22時) (レス) id: 8994a0e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とまとたらこ | 作成日時：2018年1月11日 23時
