11話 「帰る時間だな」by Soki ページ11
「なぁ、もう終わったか?裁判長サマ」
「閉廷しましたよ?」
「なんだよ。なら帰るぞ」
「そうですね」
今はその笑顔が蒼樹には恐ろしく感じる。
「……」
「……」
気まずい時間が流れる。
ちょっと緋奈が可哀想に思えてしまう。
校門に着くと、紅葉は緋奈と別れた。
「……おい、ヤバくねえか?」
「……そうですね」
悪趣味な神のイタズラか、緋奈と碧斗の帰る方向が一緒になった。
「暗くなったな。明るい道をできるだけ通るぞ」
「賛成です。正直怖いですし」
「素直だな。送ってやるよ」
「助かります」
薄暗い中、歩道側に紅葉を移動させる。
「……?」
「俺なりの罪滅ぼしだ」
「顔のこと……ですか?」
「まあね。週末に教えてやる……」
悲しそうな笑顔を浮かべる。
僅かに揺れる前髪が、彼の不安定さを物語る。
「……」
「なぁ、北條」
「は、はい!」
「お前にも誰にも言えない秘密があるんだろう?」
「……?」
「血縁者……とかね」
「!?」
「図星か」
彼女の家がすぐ近くになっていた。
寂しいと感じてしまう紅葉。
「北條。お前さ、俺が寝てた時に頭撫でただろ」
「え、どうして……」
「わかるからな……。家、近いだろ。手、貸せよ」
言われるがままに彼女は手を差し出した。
「細長い……!」
「小さいな。らしいといえばらしいが」
「どうするんですか?」
「決まってるだろ。やることなんて」
力加減をしながら、蒼樹は彼女の手を握った。
「あ……えっと……恥ずかしいですよ」
「まぁな。でも、悪くないだろ」
「南雲君の手……温かくて気持ちいいです」
「お前の手が柔らかくてね」
家の前に着く。
「南雲君……ありがとう。気をつけてね!」
「おう。毎朝迎え来るから。じゃあな」
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作者名:アンノーン | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kronos1/
作成日時:2018年12月10日 18時