ブラックと、とある魔女 (ページ6)

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1〈魔女雨の誕生〉ページ6

そう言って、私は笑顔を浮かべた。
「Well then！」
　ブラックは踊るようにくるりと回ってから右手をこちらに差し出した。その掌の上で、空気がまるで渦を巻くように集まり、光を放ち、そして、瞬く間に紙の束へと形を変える。完成された紙束は、その後も仄かな光を纏っており、どこか神秘的に見えた。
「Please sign this contract」
　そして私の目の前に、真っ白な羽のペンがゆっくりと降りてきた。警戒心によって、私がそのまま放心状態のようにぼーっとしていると、ペンはまるで私を案内するように、すうっと、その真っ白い羽を靡かせながらサイン欄の上に移動した。
「Here…」ブラックはサイン欄をそっと指さす。
「……」
　私はふわふわ浮いている羽ペンを手に取り、彼に指さされていたサイン欄に記名した。

ーーーA

「ディール！！」

＊＊＊

「…Black,where is this place？」
「It is HELL. There are a lot of monsters. Also,this world is near your world」
「HELL……」
　見渡してみれば、絵本で見たような、歪な形をした魔物らしきものが、ウヨウヨしていた。空を見上げてみても、同じく羽の生えた怪物が飛び交っている。
「Some monsters who like humans. However you are safe because you're with me」
「じいーい！」
「…Thanks」
　励ましてくれた二人に、お礼と笑顔を送った。

　傍に居るから、大丈夫。そうわかるだけで、暖かく、痛く、心地良くなる気持ちが、ここにあった。

「We can return to that world. カカカッ! I'm looking forward to seeing what kind of footage we'll get……」
　目を輝かせているブラック。とても楽しそうだ。
　そんな彼を見るだけで、多幸感に包まれる。そんな気がした。
「Then,here we go」
　彼は右掌を正面に向け、その先からブラックホールのようなものを出現させた。そんな異能な力を見ていると、嫌でも彼が悪魔であることを実感させられ、いつ魂を奪われりのだと、少し緊張するのだった。
　私は立ち止まったまま、ブラックがその中に入って行く様子を見ていた。その場から一歩も動かずに、ただ彼の中に入る様を観察していた。
　罠ではないのか。そんな疑問を解消するために。
　そんな私の様子を見兼ねたのか、ブラックが。
「A,Shall we go together？」
　そう言って、こちらに手を差し伸べてくれた。