2〈魔女雨の日常〉 ページ23
そんなことが、許されて良いわけがないだろう。
だって、あいつらは救いようのない、今までのどの罪よりも愚かな、『ブラック様を批判した』、『ブラック様を悲しませた』という二つの大罪を犯したのだから。
「それでは私はこれで。二人共、おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい。雨」
「じぃい」
まぁ、ブラック様が目を背けていたいなら、それでも良いですよ。
私が代わりに、罰してきますから。
深夜。もっと言えばブラック様たちが寝静まった頃だった。寝間着からいつもの魔女服に着替えて、私はこっそり家から抜け出したのだ。
しっかりと黒のマントを羽織り、サファイアのブローチで止め、大きな魔女の帽子を被り、紫の水晶のついた杖を手に持って、出発した。
「Well, then…」
スカートのポケットから、一枚の小さく折りたたまれた紙を取り出した。丁寧にそれを開いて、一番上にある文字を読んでいく。
『罪人(アンチ)のリスト表』だ。ブラック様のPCを借りて、片っ端から彼を否定した奴を探し出した。居場所も、その他個人情報も、ほとんど私の手の中にある。
だが、流石ブラック様だ。罪人といえど、数は少ない。やはり、批判するヒトたちの頭が可笑しいのだ。きっとそうだ。
だから、私は一刻も速く、そいつらに罰を下しにいかないといけないのだ。
脳内で対象の居場所を想像しながら、杖に魔力を流し込んだ。すぐに水晶は光を放ち、あの黒いワープホールを作り出した。
直ぐ様、私はその中に入り込む。恐怖も躊躇もなく、ただ憎しみを胸に抱えて、飛び込んだ。
「ハァ、ハァ、ハァ…」
逃げていく。逃げていく。みっともなく、愚かな怪物は逃げていく。
「っ?!」
行き止まりに当たり、怪物はこちらを振り返った。もう、終わりか。
「何なんだよ、おまえっ!!」
尻すぼみ怪物は、震えた声で叫んでいる。そんな愚か者に、私は徐ろに杖を突きつけた。
「嗚呼、可哀想ですね。天使様を否定するなんて愚行をするから、こんなことになるんですよ。本当に、愚かですね」
私がそう語りかけてあげた怪物は、困惑と恐怖が混ざったような、とても滑稽な顔をしていた。
「っ狂ってる!お前!!」
「くるっ、てる…?」
私は目を丸くしたまま、告げられた言葉を噛みしめる。
「……あはっ」
狂ってる、狂ってる。その意味を理解した途端、腹の底から笑いがこみ上げてきた。その場で杖を怪物に突きつけながら、お腹を抱えて大笑いをした。
2人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:U-ray | 作者ホームページ:http://Kegaretakoinitumonakiaiwo0
作成日時:2024年3月25日 23時