2〈魔女雨の日常〉 ページ22
‥‥五年目。
あっははは。
私が狂っていると言われた年だった。
私が数え切れないほどの罪を犯した年だった。
私が、人生で最高の瞬間を迎えた日でした。
「……まぁ、こんなものですか」
「じ〜」
ブラック様が、何やらパソコンを見て呟いた。何を見ているのかと気になった私は、彼の後ろからこっそり近づく。
「何見てるんですか?ブラック様!」
ブラック様に飛びつき、彼の首元に両腕を絡めた。
「雨…」
椅子に座ったまま、こちらに顔を向けてくださった。眉の垂れ下がった、困ったような笑顔だった。その笑顔も狂おしいほど好きです。
「先日アップした動画の伸びを見てまして」
「やっぱり凄いですね!いつもいつも」
そのまま絡みついた体制で、モニターを覗き込んだ。
「……は?」
流れている映像は、相変わらずのクオリティで、とても面白い。だがそうではない。そこではない。
ーーーつまらんな
ーーーなんでまだYoutubeやってんだこいつ
ーーー消えてくれ
ぽろぽろと呟いている文字たちが、画面に毒を撒いていた。
「……何ですか。このヒトたち」
指で指して、ブラック様に訊いてみた。答えなど、最初から分かっていたのに。
「こういうのは日常茶飯事ですから。放っておいて大丈夫です」
気にしていない素振りで、ブラック様は動画を閉じた。だが私の中では、まだあの文字列が蠢いていた。
どうして、ブラック様にあんな酷い口を叩けるのか。信じられない気持ちと憎たらしく思う気持ちが、背筋を這い上がっていく。
「ブラック様は、悲しくないのですか?こんな酷いコメントを見て」
「はい」
今、一瞬、ブラック様は眉を顰めた。
「オレちゃんは大丈夫です」
「…そうですか」
ーーー嘘だ。
本当に気にしていないなら、そんな悲しそうな顔はしない。このヒトだって、心の内では我慢しているのだろう。嫌なコメントを見つけては、目を逸らすことで、今まで耐えてきた。そうなのだろう。
嗚呼、可哀想に。そして憎い。
大好きなブラック様を悲しませる輩が、とても許せない。私以外が、彼を悲しませて良いわけがない。
愚かな罪だ。罰を与えなければ。
今まで何度も見てきた、人間界での撮影。過ちを犯した人間は、皆ブラック様という天使様の下で罪を裁かれ、更生する。そういう仕組みなのだ。
だが、あいつらのもとには、ブラック様は来ない。故に罰せられることもないということ。
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作者名:U-ray | 作者ホームページ:http://Kegaretakoinitumonakiaiwo0
作成日時:2024年3月25日 23時