ブラックと、とある魔女 (ページ18)

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２〈魔女雨の日常〉ページ18

「……解っていますよ」
　ゲーミングチェアに座りながら、喋りかけてくれた彼を、淡々と見つめた。切なく、本当に悲しんでいるような表情で。
「解っています、解りきっているんです……それでも」
　嗚咽を混じらせたような声。本当に目の前が滲んできてしまう。好都合だ。
　私はブラック様に近づいて、また下を向いて、息を呑んだ後にまた顔を上げた。
「失敗は、やっぱり悲しいじゃないですか……」
「………」
　失敗したなんて、微塵も思っていなかった。それは今も同じだ。だって、あの出来事のお陰で、今私は。
「…そうですよね」
　ブラック様は立ち上がり、俯いていた私の頭にそっと手を乗せた。ぎこちない。だが、優しく動かされる。
「……悲しいですよね」
　嗚呼、私は何て幸せ者なのだろう。ブラック様から、骨を折ったときよりも、優しくされる。これで良い。まぁこれで良いですよ、今はまだ。

「ブラック様……」

　目を擦って、彼の顔を見上げた。

「………大好きです」

＊＊＊

　四年目。
　ブラック様が撮影で人間界に行っている時だった。私のために用意された部屋で、今最後の魔導書を読み終えてしまった。暇な時間を埋めるため、新しい魔導書の仕入れをするため、地下室の書庫で何があるか探っていた時だった。
「これは…？」
　引き寄せられていくように、ある一枚のビデオテープを手に取った。題名や詳細は書かれていない。それでも、何だか、惹かれる気がしたのだ。
　私はすぐに、近くにあったビデオプレイヤーで中身を確認することにした。

　白い柱と、教会にあるような宝石の如く青い窓。その外では、コバルトブルーの空が広がっていた。そんな『神聖』という言葉を体現したような建物が、画面いっぱいに映った。
　その建物の中で、忙しなく動き回るヒトビト。そのほとんどが白い髪を持っていた。
　私はこの光景に疑問を覚える。
　まずは、窓の外に浮かぶ白い雲だ。魔界の雲の色は赤黒かった、人間界にここまで高い建物はなかった。また、忙しそうに活動している白髪のヒトビトにはの背中には、必ずと言ってもいいほど白い翼が生えていた。
　今まで見たことのない光景、日常。だがこの疑問は至極簡単な結論で片付けられた。

　ここは天使様や神様のいる、所謂『天界』という場所なのだろう。

　最近、神様が後継者を探している。そんな噂が流れる中、独り、噂に無頓着な天使がいた。天界における、実質Ｎｏ．2の実力を誇る天使、通称B。