2〈魔女雨の日常〉 ページ16
「Should at the beginning became unstable. If it…」
「じっ………」
ドサッと、何かが落ちる音がすぐ隣から聞こえた。視線をそちらに向けると、先程まで空中にふわふわと浮いていたカメラちゃんが、床に倒れ込んでいた。
「カメラちゃん?」
体を持ち上げて、カメラちゃんの名前を呼ぶ。返事は来ない。魔力切れだろうか。それとも常時作動の熱で倒れてしまったのか。まぁ、そんなことどうでもいい。問題はそこではない。
もし、私がカメラちゃんを傷つけたとブラック様が知ったら、きっとあのヒトは私を許さないだろう。最悪嫌われて、もう二度と私を見てもらえなくなるかもしれない。
それだけは、何としてでも避けないと、いけない。
氷に浸す?いや、機械には逆効果だろう。魔力切れなら私のを注ぎ込めば良い。取り敢えず、まずはそうしてみよう。
カメラちゃんの体に、杖の先端を付けて、魔力を流し込んでみる。
「………じ」
「あ、良かったです。起きました」
「じい……」
まだ少し疲れているようだ。フラフラとしてた動きである。だけど、こっちはもう少し練習に付き合ってもらいたい。
「無理させてしまってごめんなさい……あともう一回だけ、良いですか?カメラちゃん」
「じ、じい」
まぁ、また倒れられても困るし、今日はこれで終わりにしてやろう。そう考えて、私は曲を再生した。
数日後、遂に本番がやってきた。なにか特別なドレスを着ていくわけでもなく、いつも通りの魔女服で、ブラック様と一緒に会場へ向かった。もう既に大勢のヒトが集まっていた会場では、花火大会の日のことが起こらないよう、しっかりと手を繋いで裏方へ移動していった。
「では、オレちゃんは司会の方へ行ってきますので」
「はい!」
今回ブラック様は、本日の歌合戦の司会担当としてお呼ばれされていた。だから私たちは、残念ながらここで一旦お別れだ。
ブラック様が見えなくなるまで見送った後に、私も舞台袖へと移動した。左手にはいつもの杖を持って、ただ自分の番が来るのを待っていた。
舞台の上で曲が大音量で流れながら、よく解らぬメロディーを奏でている魔物たち。正直、上手ではなかった。この程度なら私が本気で歌おうとしなくても勝てるのではないか。そんなことも思っていた。
「続いては!空前絶後の魔法使い、A!どうぞ入ってきてください!」
ブラック様の声のアナウンスに従って、私はマイクを右手に持って舞台上にゆっくりと出ていった。
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作者名:U-ray | 作者ホームページ:http://Kegaretakoinitumonakiaiwo0
作成日時:2024年3月25日 23時