ブラックと、とある魔女 (ページ15)

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２〈魔女雨の日常〉ページ15

そんな単語の分析をしている最中に、私の体はふっと浮かんだ。背中と膝裏にブラック様の腕が通り、そのまま高く、高く、上っていった。
　だが、そんなことは些細なこと。問題は、私がブラック様にお姫様抱っこされているという現状だった。表情は固まる。固まったまま、視線はすぐ近くにあった彼の顔に向かっていった。
　痛くなる心臓。今までとは比べ物にならないほど脈打っている。
　だが、それ以上に、近くにいることが、嬉しかった。安心した。

ーーーパァン！！！

　左側で、花火が咲いた。鼓膜を突き破るような激しい音で。
　けれども視線は、一向に揺るがない。
　燦めいた瞳で花火を見つめていた、貴方様の顔を
　ただただ、見つめていたのでした。

　その笑顔のためなら、私はどんなことだって犠牲にしてやろう。

＊＊＊

　三年目。
「『歌ってみた』をやってみませんか？」
「え？」
　夕食時。水でガマズミをさっと洗っている途中に、ブラック様からそんなことを提案された。

　花火の日から数週間後。遂に私もブラックチャンネルに出ることが許されました。最初に登場したのは、魔法対決。ブラック様が私という魔女を紹介してから、そこらにいる丁度良さそうなドラゴンと闘うというものだった。
　肩を擦ったり、足の骨が折れたりとかなり苦戦したが、何とか奇跡的に勝つことができた。
　ブラック様、とても楽しそうな顔をしていましたけど、撮影が終わった後は親身に、真剣な顔になって看病してくれました。
　彼にここまで心配していただけるなら、もっと沢山酷い目に遭いたい。そんな切実な願いが芽生えた日だったが、その後に魔法対決をすることも、私が危険な目に遭うことも、残念ながら一度もなかった。
　嗚呼、そんなに私が骨を折ったことを真に受けてくださるのかと、嬉しく思う反面、少し退屈に思ってしまう自分もいた。
　だから思ったのだ。新しいことに足を踏み入れれば、このちょっとした退屈も和らぐのではないかと。何より、ブラック様からのお勧めです。断ることなんて、私には到底できませんでした。
「はい！」

　最初の『歌ってみた』の挑戦は、闘技場にも似た大きな舞台での、歌合戦だった。「雨さんならきっと上手くできますよ」と言われた私は、言葉通りの歌を実現するため、毎日一生懸命練習した。
　カメラちゃんに頼んで、自分の歌を録音して、直す。録音して、直す。その繰り返しだった。
「じぃ……」