2〈魔女雨の日常〉 ページ14
杖は羽交い締めされる際に地面に落ちてしまったが、これくら杖は羽交い締めされる際に地面に落ちてしまったが、これくらいの位置なら足で杖の先端を踏んで、テコみたいに跳ね上がらせることができる。
さて、どうしようか。炎に氷に雷、いや、重力系の方が苦しいでしょうか。取り敢えず、拘束を解いてしまおう。
そう思い、地面に落ちた杖を回収しようとした。矢先。
「…ここに居ましたか」
「っ誰だ!?」
魔物たちが声のした方を向く。当然、私もそちらの方に目を移した。聞き逃すはずがない。聞き間違えるはずがない。だって、今まで散々聞いてきたのだから。
ゆっくりとこちらに向かって歩いてくるのは、黒い髪、黒い服、赤い三角形が右目の位置で光っている、人の姿。極めつけは、その隣にふわふわと浮かんでいるビデオカメラの異形。
嗚呼、やはり助けに来てくれますよね。嬉しいです。
緊張の解けた笑顔を浮かべて、私はブラック様を迎えました。
「その子、離してもらえますか?」
「ブ、ブラックさん?!は、はい、わかりました!」
掴まれていた両腕は解放された。すぐに床に落ちた杖を拾って、ブラック様の元へ駆けていく。
足の裏で、勢いよく地面を蹴って、そのまま彼の胸に飛び込んだ。
体温は無かった。
「ブラック様ぁ、怖かったです……」
こうして甘えるために、また嘘を吐く。
だが、ブラック様に暫く触れていないせいで気が狂いそうだったのだ。これくらいは許してくれるだろう。
「怖かったですよね。もう大丈夫ですよ」
そう言って、私の頭を撫でてくださった。
嗚呼、嬉しいなぁ。幸せだなあ。もう、何もかもがどうでも良いな。
よし、私を捕えた奴らは、ブラック様が来てくれたことに免じて許してやろう。何より今私は気分が良いんだ。この時間を壊したくない。
「ブラック様、花火、見に行きましょ?」
「そうですね。行きましょうかカメラちゃん」
「じー!」
ブラック様の手を握って、私は、私たちはその場を後にした。
ーーー「間もなく、打ち上げを開始します」
そんなアナウンスと同時刻、何とか会場に戻ることに成功。
「結構後ろになってしまいましたね」
「じぃ」
何でも良い。こうしてブラック様と一緒に居られるのなら、どんな境遇だって構わない。そんな想いで心を満たし、花火の上がる時を待っていた。
「では、飛んで見ましょうか!」
「え?」
飛んで見ましょうか。つまり、飛んで花火を見るということ?
2人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:U-ray | 作者ホームページ:http://Kegaretakoinitumonakiaiwo0
作成日時:2024年3月25日 23時