2〈魔女雨の日常〉 ページ13
「私の名前は、雨です!」
自信満々に、ブラック様に言ってみせた。そんな私に、彼は優しく微笑んでくださいました。嗚呼、大好きです。
大好きですから、頑張って、役に立ってみせます。
***
二年目。
今日も魔法の練習や、勉強を沢山した。最近は日本語だけでなく、数学やりかも学べて楽しい日々だ。
それに、魔法も結構使えるようになってきたし、そろそろ一人で魔界を歩いても大丈夫だと思うのですが、ブラック様はまだ許してくれません。
だけど、それが心配の裏返しだと思うと、とても嬉しいので、私は大丈夫です。
そんなある日、彼から声をかけられたのです。
「今日は花火が上がるらしいんですよ!雨さん、一緒に行きませんか?」
自身の固まる表情を他所に、内心はひどく興奮にしていた。お誘いだ。花火だ。何よりブラック様と一緒にいられる。そのことが何よりも幸せだ。
「…勿論です!」
断る理由など、どこにもなかった。
余程人気のイベントだったのか、花火会場はとても混んでいた。数十年に一度行われるらしく、今を逃したらまた何十年も待たなければいけないというのも、理由の一つだと思う。
「打ち上げまでもう少し理由がありますね。雨さんも、はぐれないように気をつけてください」
「は、はい」
余りにも通れる隙間が狭いため、何とかブラック様たちとはぐれなようにと、細心の注意を払っていた。しかし。
「こりゃあ人間だあ!」
ふと、杖を握っていた方とは逆の腕、左手を掴まれる。
魔法が使えるからといって、私は人間なのだ。力比べでこの世界の生物に対抗できるはずがない。
故に力に負けた私は、そのままどこの誰かも分からない奴らに引きづられ、薄暗く、ヒト目に付きそうのない場所へと連れられてしまった。
嗚呼、ブラック様の背中が遠ざかっていく。はぐれてしまっては駄目だと解っておきながら、何をしているのだ、私は。いっそ手でも繋いでおけばよかったでしょうか。
そんな反省会を脳内で開きながら、この状況をどうにかする方法も練ることにした。
現在、私を連行した魔物たちに羽交い締めのような体制で拘束されている。魔法とかが使われなかっただけ良かったか。
「誰ですか?貴方たち。離してくださいよ」
「こんな運良く人間が見つかるなんざ、思ってもなかったなあ」
交渉に応じてみようと思ったが、相手は全く話を聞いていないようだ。
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作者名:U-ray | 作者ホームページ:http://Kegaretakoinitumonakiaiwo0
作成日時:2024年3月25日 23時