・ ページ8
「そしてここからは
声色と共に一人称が変わった。
今まで“私”と取り繕っていたようなものから、殻が剥がれたような気配すら感じた。
「君達は欲深く自分勝手で…平然と他人を傷つけるのに自分の痛みには何よりも敏感で…」
“彼”は低い声でそう語りながら石碑の後ろへ回る。
そこには人1人寝転がれるほどの大きな岩があり、岩の上に仰向けで寝ていたのはAだった。
寝ているというより、眠らされていると言った方がいいか。
Aがそこにいることに驚く者はいない。
何故なら予め、「彼女は
生贄のはずのAを“彼”はそっと抱き上げ、この世の何よりも愛しいものを見るような目で見て強く肩を抱いたのちに直ぐ、横にいる彼らへ軽蔑の視線を向けた。
「同じ人間でありながらも取るに足りない理由で差別し妬み憎み…何かを崇め尽くすことで自分の弱さや罪を正当化する…！全て…何もかも…汚い自分の為だ…！
そんな人間達のためにAはあんなにも耐えて…尽くして…捧げて…犠牲にしていたのに…！
やはりオマエ達人間は、身勝手で度し難い、愚かな醜い存在だ…！！」
“彼”の目に籠っているのは軽蔑や侮蔑だけではない。
例えるなら肉親の仇を見るような、想い人の仇でも見るようなそれだ。
否、“彼”にとっては本当に、人間が肉親の仇であり想い人の仇なのだ。
“彼”の理屈はメチャクチャだが一貫性がある。
何より、そのメチャクチャな理屈で白夜の魔眼は出来上がり、理に干渉するにまで至ってしまったのだから。
「復活の礎となれ…！！」
とうとう“彼”は最後の魔石を嵌め込んだ。
直後、とてつもない魔力が石碑に宿る。
大きな犠牲を代償に、強大な魔力が目醒めるのだ。
“彼”がラデスたちに言っていたこの儀式は全てが嘘ではなかった。
魔石が揃えば強大な魔力が目醒めるのも、代わりに大きな犠牲となる魔力や生贄が必要なのも本当だ。
ただその生贄となるのが、Aではなかったのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 838人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
HANON(プロフ) - 柏餅さん» 神だなんて光栄です！柏餅さんコメントありがとうございます。 (3月17日 0時) (
レス) id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - シオンさん» 何度も読み返していただけて嬉しいです。シオンさんコメントありがとうございます。 (3月17日 0時) (レス) @page13 id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
柏餅(プロフ) - 神すぎます！ (3月13日 22時) (レス) id: 55951e8f98 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 本当に本当にすごい。何回も読み直してます！それでもずっと面白い！！本当に本当に最高です。 (1月19日 2時) (レス) @page12 id: cb169202a3 (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - 桜さん» ありがとうございます。更新頑張ります。 (10月13日 0時) (レス) @page11 id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：HANON | 作成日時：2023年1月15日 20時
