ハニートラップはお断り【名探偵コナン】 (ページ33)

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第三十二話ページ33

……アニメの世界の人間に嫉妬など可笑しな話だとは思うが、羨ましく思ってしまった。

思えばこの世界にはそんな優秀な人ばかりだ。

コナン君こと工藤新一君だって、ヒロインの蘭ちゃんだって

毛利小五郎さんだって、探偵では少し頼りないかもしれないが、家族思いで、元刑事の腕がある。

園子ちゃんだって、友達想いのいい子で、本当に裏表のなさそうなところに子供ながらに憧れたものだ。

あぁ、今日はそういう日なのだろうか。
感傷的になりすぎる。

私だって分かっている。

平凡な人なんてこの世にいくらでもいる。
でもその平凡の中でも、下にいる気がしてしょうがないのだ。

だから欲が出てしまう。
何か、何か一つだけでもできることが欲しい。

自分の良いところが、何か。

人は人生で壁にぶつかることが何回かあるらしい。テレビで言っていた。
きっとこれはその壁なのだろう。

しかしテレビはその解決法までは教えてはくれなかった。
皆ぶつかるというのならば、どうやって解決しているのだ。

「何か悩みがおありなのですね。」

「え……」

「最近、ずっとあなたは悩んだ顔をしている。」

「……分かりやすいですか。」

「……そうですね、分かりやすいかと言われれば、とても分かりにくい。
だからこそ厄介だ。悩みがあることに気づかれにくい。」

……気づかれにくいというか、できるだけ気づかれないようにしているのだけれど。

私ごときのことに心配かけたくない。
迷惑かけたくない。
……特に、両親が亡くなった時に引き取ってくれた親戚の皆さんには。

だから逆に、“悩み事あるでしょ”なんて言われたことないのが当たり前だった。
だってそれを私が望んでいるのだから。

「話してみてください。」

だからか。

沖矢さんが“悩み事がある”なんて確定事項のように言うものだから。
その時は沖矢さんがよく使う“よろしければ”なんて曖昧な言葉がなかったからか。

言葉にならない感情が押し上げてきて、それは目から雫となって出てきた。