ハニートラップはお断り【名探偵コナン】 (ページ28)

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第二十七話ページ28

帰りましょうか

その彼の一言で車がまた帰り道へ走りだした。

今になって予定の時間は大丈夫ですか？なんて聞いてくるものだから、なら寄り道などしないで欲しいと思いつつ、大丈夫ですと返しておいた。

少し見覚えのある道が見え、気づけば米花ホテル前についていた。
ありがとうございますとお礼を言って車から降りようとしたとき、安室さんに腕を捕まれた。

「……」

「……安室さん？」

「……降谷」

「え？」

「僕の苗字、本当は降谷っていうんです……誰にも教えてないですが。

今はほとんど使ってませんが……旧姓ってやつですよ。
今は安室ですが、降谷が元でして……ってこれじゃあ等価ではないか……」

そういきなり照れたようにそっぽを向く彼がおかしくてつい笑ってしまう。

人の偽名を暴いた代わりに自分の旧姓を教えるって……
そんな情報、仕入れて何になるんだって感じだし、まったく等価ではない。
というか、旧姓を誰にも言わず、秘密にしてるってのも訳が分からない。

なのにやけに真剣に言うものだからおかしくなってしまったのだ。

「フフッ…降谷さん、ですね。」

そういえば彼は少しムスツとした後、はい、と返事をした。

「あ、でもこれは秘密ですよ。誰にも言っちゃいけません。僕とAさんの、二人だけの秘密です。」

ね？

と小指をこちらに向けてくる彼。

先ほどまでのシリアスな空気なんてどこに消えたのか。

私もその空気に絆されて、先ほどの恐怖もどこかへ消えていた。

この歳で指切りとは…なんてまた笑ってしまうが、素直に彼の小指に自分の小指を絡めた。

「…はい、約束です。」

その言葉に満足したように頷くと、今度こそ安室さんは去っていった。

その白い車を見えなくなるまで見つめる。

黒の組織の一員だと警戒していたが、実はそんなに怖い人ではないのかもしれない。
いや、全てがハニートラップだという可能性も忘れてないが……
もしかしたら赤井さんと同じで潜入してる…とか……

なんて、んな訳ないか。

まだ少し寒い夜風に思わずくしゃみをしてしまい、急いでホテルの中へと入った。