10 継承の儀式〈ﾎﾟﾙｺside〉 ページ10
九つの巨人を継承した戦士の家族は、『名誉マーレ人』でありながら、戦士にとってはマーレ国の『人質』の意味合いの方が強い。
少しでもマーレに逆らえば、真っ先に制裁を受けるのはレベリオ収容区に住む家族だ。
それでも俺は、尊敬する兄マルセルが継承した『
いや本音は、俺達エルディア人を蔑み、収容区に閉じ込めて迫害するマーレ人なんて嫌いだ。
島の悪魔と同じくらいに。
何十年も前に楽園送りにされたという、目の前の哀れな女に目を向ける。
多少の同情はあるにせよ、兄貴を喰った事実が俺の怒りを募らせた。
拷問で衰弱し、生きる気力も無くした光の無い瞳は、どこも見ていないようだ。
「時間です」
巨人学会から派遣された巨人継承の専門家が、懐中時計に注いでいた視線を上げた。
小瓶から液体を移した注射器の針がチクリと腕に刺さり、冷たい脊髄液が注入されていく。
数秒後。
無理矢理、体内が改造されていくような、気持ち悪いむず痒さに身震いした後、目映い閃光に包まれ…――
――…
「目が覚めたか、ポルコ」
俺が横たわっているベッドの傍らで椅子に座っているジーク戦士長が、読んでいた本を閉じた。
「ここは…」
…医務室…？
それも軍幹部が利用する一等級の個室だ。
俺が九つの巨人を継承し『名誉マーレ人』となった証だろう。
「無事に継承の儀式は終わった。気分はどうだ？」
「悪くは…ない、です。そう…か…終わったのか…」
「実感、無いだろう？」
「はい…」
少し微笑んだ戦士長をぼうっと眺め、霞む頭を何とか働かせるが、『その瞬間』の記憶は抹消されたようだ。
九つの巨人を継承した奴らは、『その瞬間』を憶えていないとは聞いていたが、俺も例に漏れず、本当に何も憶えていなかった。
「だが、間違いなく顎は、お前の中にある」
「……。」
何かが変わった感じがしないから、まったく実感はない。
だが、左腕には念願の赤い腕章が着けられていた。
やっと…『戦士候補生』としての黄色の腕章から卒業できたんだな…
ライナーに継承権を奪われてから５年。
「長かった…」
両手のひらを広げて見つめると、苦悩と屈辱の日々が脳裏に蘇り拳を握る。
辛酸をなめる毎日からやっと解放されたのだ。
兄貴の分も俺が…きっと…
顎を継承することは家族にすら伝える暇はなく、何かに追われるように早急に整えられた継承の儀式は、こうして成功したらしい。
帰ったら最初に報告しねぇとな。
喜んでくれるだろうか…アイツは――…
*
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夢梨(プロフ) - sato711825さん» コメントありがとうございます！意外とポルコ推しさんがいてくれてほっとしています。場面が思いついたら更新していますので、お付き合いいただけると嬉しいです(*´∀`)♪ (2021年4月22日 16時) (
レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
sato711825(プロフ) - 続きが見たいでえええす！！！！ポルコ推しなので私得ですっ！ (2021年4月21日 1時) (レス) id: 2b67c28291 (このIDを非表示/違反報告)
夢梨(プロフ) - Ronnyさん» コメントありがとうございます！ライナー好きさんがいてくれて安堵しました(*´ω｀*)頭の中に浮かんでいる言葉や場面をまとめるのに時間がかかりますし、期待に応えられるか自信もありませんが、何とか読者様が没入できるお話を書きたいと思います(*^^*)♪ (2021年4月11日 15時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
Ronny(プロフ) - あああああああどうなるんだ!!!!ポルコもライナーも好きだからつらいw次の更新も楽しみに待ってます! (2021年4月10日 23時) (レス) id: d499d51969 (このIDを非表示/違反報告)
mitsuyuu0907(プロフ) - 夢梨さん» お返事ありがとうございます。そうです。ポルコ落ちのお話を作っていただきたいです！本当にポルコの夢小説少なくてポルコ不足なんですよね_(´-`_ _)_よろしくお願いします！ (2021年4月5日 21時) (レス) id: a8ac705c71 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夢梨 | 作成日時：2021年1月16日 19時
