34 過去の痛手 ページ32
熱い…
近づいた私の腕を強く掴んで引き寄せたハーマー文官長に抱きしめられた刹那、彼にしては酷く余裕のない口づけが降り注ぐ。
ポルコの目の前だというのに、身体の中心から徐々に火照っていく口づけを受け止めて、身も心も溺れそうになっていた。
どちらにしろ彼はマーレ人の軍幹部。
例え『奉仕』は終わったとしても、エルディア人の私に拒むことは許されない。
「…ﾊｧ…」
小さなリップ音を鳴らして解放された唇から、留められていた吐息が漏れる。
直後、私の腰を力強く引き寄せる縋るような温かい腕に、沈み込む身体を預けた。
「A…？」
かすれたポルコの呼ぶ声に、伏せたまま薄く目を開けた。
ポルコと視線を合わせることは出来ない。
ハーマー文官長とポルコの言い合いを、どこか遠くの出来事のように聴いていた。
不意に、身体に巻きついていた腕が外されて、温もりが冷めていく。
耳に響くハーマー文官長の言葉は、確かに私を自由にするものだったけれど、ポルコの傍には戻れない。
文官長の胸にしがみつき、頭を横に何度か振った。
ごめんね、ポルコ。
私は貴方に相応しくないから…
だから貴方とはこれでお別れ。
言葉に出来ない想いを、心の中で静かに告げた。
そんな納得のいかない状況で、ポルコが黙っていられるはずがなかったのに。
「A…ッ…何でだよ！」
ほら、語気が荒くなる。
ちゃんと謝らなきゃ。
「ごめんね…ポルコ…」
「は？…なんだよ、それ…どういう意味だよ！説明しろ！」
最後の怒鳴り声で、急激に恐怖が沸き上がった。
「ぁ…ｺﾞﾒﾝﾅｻｲ…ｺﾞﾒﾝﾅｻｲ…ｺﾞﾒﾝﾅｻｲ――」
条件反射のように詫びる言葉が繰り返し発せられる。
自分でもコントロール出来ない。
怖い…っ――
いや…やめて…
これ以上は…もう…
お願い…誰か…
誰か…助けてッ――！
「A、落ち着け。誰もお前を傷つけない。大丈夫だ」
ハーマー文官長の穏やかな声に、現実へと引き戻される。
蘇りかけた思い出したくない記憶の映像と怒号が、風に吹かれた煙のように消え去った。
「ぁ…わたし…どうして…？」
「俺の腕の中では不満か？」
心地いい低音の声が耳をくすぐる。
抗えずに、すべてを委ね捧げたくなってしまう衝動を、お腹の奥に捩じ込むように抑え込んだ。
「え？…いえ…そんな、ことは…」
千々に答えたものの…
問いかけられて初めて、ハーマー文官長の温もりに安心して身を委ねている事に気づき驚いた。
私…いつのまに…
ハーマー文官長に抱きしめられて心底、安堵している。
*
35 始まりの日〈貴女&ﾛﾍﾞﾙﾄside〉→←33 喪失〈ﾎﾟﾙｺside〉
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夢梨(プロフ) - sato711825さん» コメントありがとうございます！意外とポルコ推しさんがいてくれてほっとしています。場面が思いついたら更新していますので、お付き合いいただけると嬉しいです(*´∀`)♪ (2021年4月22日 16時) (
レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
sato711825(プロフ) - 続きが見たいでえええす！！！！ポルコ推しなので私得ですっ！ (2021年4月21日 1時) (レス) id: 2b67c28291 (このIDを非表示/違反報告)
夢梨(プロフ) - Ronnyさん» コメントありがとうございます！ライナー好きさんがいてくれて安堵しました(*´ω｀*)頭の中に浮かんでいる言葉や場面をまとめるのに時間がかかりますし、期待に応えられるか自信もありませんが、何とか読者様が没入できるお話を書きたいと思います(*^^*)♪ (2021年4月11日 15時) (レス) id: 2fea8fb6ab (このIDを非表示/違反報告)
Ronny(プロフ) - あああああああどうなるんだ!!!!ポルコもライナーも好きだからつらいw次の更新も楽しみに待ってます! (2021年4月10日 23時) (レス) id: d499d51969 (このIDを非表示/違反報告)
mitsuyuu0907(プロフ) - 夢梨さん» お返事ありがとうございます。そうです。ポルコ落ちのお話を作っていただきたいです！本当にポルコの夢小説少なくてポルコ不足なんですよね_(´-`_ _)_よろしくお願いします！ (2021年4月5日 21時) (レス) id: a8ac705c71 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夢梨 | 作成日時：2021年1月16日 19時
