キャットフード【SVT ALL】

38 ページ38

JSside



僕は凄く緊張していた。
ジョンハニがお風呂の扉をしめた瞬間

目の前の女の子と2人きりになる


いつも周りに綺麗なアイドルの人もたくさんいて
カラット達にもあって

女の子には慣れているつもりだったんだけどな。

「熱くない？」

「…」

僕が話しかけるとAは僕を見つめた。

警戒したままのその目はなんだか悲しいそんな目をしていて
早くこの子を普通の生活に戻してあげたい。そう思った


その後首を縦に振ったAを見て安心する

「じゃあ、髪の毛洗おっか」

そういうとAは不思議そうな顔をする
だから体が痛くて洗えないのかと思ったんだけど

「あれ、体痛い？僕がしようか？」



僕は、甘く見ていた



「わたし、水の中に入って終わりだった」

初めて聞いた声は細く繊細で
綺麗な小さな唇はそんな言葉を言う。


「え…？」

「わからない。ごめんなさい」



胸の前で手のひらをキュッと握りしめて俯くと
まるで悪いことをして反省しているかの様に少し震えている。


ああ、そっか。この子はきっと
お風呂の入り方も知らないんだな。

数秒まえの自分が嫌になった。

全部、初めから教えてあげなくちゃ



「謝らないで、ごめんね。僕が教えてあげる」

そう言うと僕はシャワーを顔にかからない様に頭にかける。
ビクッとした後に目を閉じると気持ち良さそうな顔をするから
なんだかドキッとしてしまった。


「あったかい....」

冷たい水に浸かっていたと言うこの子は
そう言って暖かいお湯に感動していて

ひと通りお湯を流し終わると次はシャンプーとリンスの説明

「これで髪の毛を洗うんだよ」

そう言ってシャンプーを手に出すと僕はガシガシと痛くない様に洗う。
女の子の髪を洗うのは初めてで、髪の長いAは何プッシュも必要で驚いた。

今まで洗ってこなかった分、何度も洗って綺麗にした。


リンスまでできて数分髪に馴染ませる途中
Aはマットの上に流し損ねて残っていた泡を手ですくう

僕はAの目の前にしゃがみこむと目を見て言った


「それ、泡って言うんだ。知ってる？」

「…ううん。初めて」



泡を見つめたままそう言うAは
警戒心のない無邪気な目をしていて

ほらね。この子は泡すらも知らないんだ。

その顔に僕は見とれてしまった。

……ずっと、この子にこの綺麗な目をさせてあげたい。

笑顔はきっと
ものすごく綺麗なんだろうな。

39→←37

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す