いのありのベイビーチョコラータ

ウィンナーに負ける僕 ページ10

「いのちゃーん早く」




「あっコロッケだから早くって言ってました!」


「コロッケ?おばさんの絶品コロッケ早くいかないとあーちゃんに全部食べられるぜっ!さっいこっ」


真面目な大崎さんが茶目っ気たっぷりにウィンクして、バタバタバタっと階段を下りていく。僕はさっきの大崎さんの優しい顔を思い出して



(大崎さん・・やっぱり大ちゃんの事・・好きなんだと思う・・たぶん・・・うん・・)って胸の奥がチクンとした



僕たちが競うようにコロッケを食べて、おばさんがどんどん新しく揚げて、大きな皿の上にはふわんと湯気が立っている大きなコロッケが増えたり減ったり大忙しだよ


「母ちゃん、ウインナーチーズも」



「はいはい、あんたほんと肉よしのウインナー好きだねぇ」



大ちゃんが大好きだという近所の肉屋さんのウインナーは昔ながらの赤いウインナーで、市販の赤いウインナーよりも二回りくらい大きくて、それにおばさんが切れ込みを入れて焼いてからトロトロに溶けたチーズを上からかけて食べるのが大ちゃんのお気に入りだ。



「大ちゃんこれだけは絶対にお弁当のおかずの取替っこしてくんないよね〜」



「あったりめーだろ?いくらいのちゃんの頼みとはいえ、これはあげらんねーな」


「ウインナーに負けてるんだ僕・・なんかちょっと虚無感だよ・・」



「なっ・・なんだよキョムカって・・英語?なんて意味?・・あっつっ」



「ああ、ほらもうあーちゃん毎度毎度これで舌火傷してるのに・・ほらお水」


(えっ?)



大崎さんが大ちゃんの顎をもって冷たい水を飲ませてやってる・・・ちょっと僕顔にやきもち出てませんか?



「ん・・ンぐ・・ン・・あっつ・・・あちぃ」


大崎さんがさっき動画見てる時みたいな優しい目をして大ちゃんの頭ポンポンしながら


「チーズの融点は水分で違うとはいえ、これでも60度はあるんだからね、しかも焼き立てのウインナーなんだから・・ほんと気を付けないと・・あ・・ほらもう・・」



そういいながら大崎さんは大ちゃんの口の端からこぼれ落ちそうなチーズを親指ですくってそのまま自分の口に入れた



ガッシャーンっ



僕あまりに動揺しちゃってコップをひっくり返して落としちゃったよ


「す・・すみませんっ」


「ほらっ伊野尾君これっ」


慌ててコップを拾ってまき散らした水をおばさんが投げてくれたタオルで拭く


「割れてない?大丈夫?」


「あ・・はい・・はは・・すみません、ぼーっとしちゃって」

野生児みたいな・・→←優しい目をしてる

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