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106. 強い視線 ページ6
部屋に入るまで、翔くんは一言も発しなかったからどうしたものか、と思ったけれど、
リビングに来ると、
「明日、仕事？」
と、聞きながら、いつもの場所に座ったから、
なんとなく、場の空気が和んだ。
「明日は夕方から。」
そう答えると、
「なんだよ(笑)Aちゃんが一番遅いのか！」
って、笑った。
そして、すぐに、あの、ハの字眉毛の困り顔をして、
「さっきはごめん。」
と言って、頭を下げた。
「やだ！翔くん。別に、謝ることじゃないよ？」
と、言うと、何か言いたそうな顔をしたけど、
「いや、とりあえず、謝らせて。」
と、もう一度頭を下げたから、
「わかった。じゃあ、この話はもう終わりにして、お茶でも飲もう？」
そう言って、翔くんに向かって微笑んだ。
そして、キッチンに行くために立ち上がろうとすると、
「でも、見ず知らずの男を、家にあげるのは、反対だから。」
と、こちらに強い視線を向けた。
さらに、
「そりゃあ、智くんは大丈夫だと思うけど、Aちゃん、今日初めて会ったんだよ？」
と言うから、
「わかった。心配してくれたんだね。ありがと。心配かけてごめんなさい。」
と言って、翔くんの隣に腰を下ろし、今度は私がペコリと頭を下げた。
そんな私を見て、翔くんは満足そうに、
「ほんと、気を付けてよ？」
と、私の好きな、穏やかな笑顔を見せてくれた。
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作者名：ゆん*
| 作成日時：2013年11月10日 19時
