EPISODE 13 ページ16
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俺は今、目の前にいる女性と見つめあっている。魅力的な大人な筈なのに冷や汗がたらたらと背中を伝って止まらない。
「はじめまして。あなたは誰?」
…ば、バレるの早すぎやしませんか!?…レイ、まさかチクったの!?
心では大パニックを起こしているが、顔には出さないように気をつける。イタズラがバレた子供のように、眉を下げてしょんぼりした表情をイザベラに向けた。
うふふと笑う彼女の感情がまったく読めない事に恐怖を覚える。イザベラは、視線を外さずに「私はイザベラよ。ここのプラントのママをしてるの」と言って微笑んだ。
「俺はA。…よろしくね」
少し怯えた表情を浮かべる。イザベラは俺の顔をじっと見つめて「こちらこそよろしくね」とクスリと笑った。
「ねぇ、イザベラは俺を出荷するの?」
的を射る質問にイザベラはうっと詰まった。勿論よ、と言うのかと思っていたけど、何も言わずに黙り込んでいた。
やがて、イザベラは寂しそうに眉をひそめてゆっくりと頷いた。
「えっ」
声が口から漏れて、慌てて抑えた。そんな俺の姿をみたイザベラは、さっきの笑顔ではなく勝ち誇った飼育者の笑みを浮かべた。
「だけど、私がこの事を本部に伝えたら、ね」
「本部…に…伝えたら…?」
「貴方は、今はもういないことになってるの。言えば出荷されると思うけど、言わなければ出荷されずにここにいるというができるということよ」
「じゃ、じゃあ!!言わないでっ」
溢れそうになる涙を必死にこらえてイザベラの腕をつかんだ。出荷されると俺は死ぬ。折角みんなを守るために逃げ出したのに、これでは意味が無い。イザベラはうふふと笑って問いかけた。
「貴方の存在を今、誰が知っているの?」
「レイ、という黒髪の男の子だけです」
「そう…ねぇ、Aくん」
イザベラからの鋭い視線が、自分が考えていること全てを見透かされているような感覚がして身震いする。
「脱獄をしようとしてる人が今ここのプラントにいるの。貴方にはそれを止めてくださらないかしら。そしたら、貴方の存在を本部に言うことはしないわ」
…ねぇ、神様
俺、なにか悪いことをしましたか?
何処かから、神様の『ごめんね、わざとじゃないの〜』という声が聞こえてきた気がした。
心の中で深呼吸し、気持ちを落ち着かせる。そして、イザベラと同じ様な笑みを浮かべた。
「別に、いいですよ」
俺の発した言葉に光など存在しなかった。
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Rabbit book(プロフ) - 公務員さん» ありがとうございます!嬉しいです(*´-`*)更新頑張りますのでこれからも応援よろしくお願いします!! (2019年8月10日 18時) (レス) id: 5389d4eda8 (このIDを非表示/違反報告)
公務員 - あ、、、、続きが気になって仕方がない、、、、、!更新楽しみにしてます!! (2019年8月8日 12時) (レス) id: 567cb90382 (このIDを非表示/違反報告)
Rabbit book(プロフ) - 花風雪さん» ソフィは、、、、どうなってしまったのでしょうか……続きをお楽しみにしててください!笑 (2019年6月17日 16時) (レス) id: 5389d4eda8 (このIDを非表示/違反報告)
花風雪(プロフ) - (´・Д・)ぽかーん、ソフィィィィ! (2019年6月16日 19時) (レス) id: e781858e49 (このIDを非表示/違反報告)
Rabbit book(プロフ) - はるせさん» そうです、やばいんですよ!!(笑)更新頑張っていきますので応援よろしくお願いします! (2019年5月13日 19時) (レス) id: 5389d4eda8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ま る | 作成日時:2019年4月3日 14時