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「あ、あの!」


走って追いかけて、さっきの人を呼び止める。

振り返ったその顔は伏黒甚爾その人だった。


「あ?」


上から睨まれ、身体がすくむ。
伏黒は五条より若干低いくらいの身長のため、私が見上げる形となり、威圧感が増す。


「その制服……高専生じゃねぇか。何の用だ」
「伏黒甚爾だよね。依頼があるんだけど」


下手に出ないようにするために敢えてタメ口で話す。


「断る」
「えっ、なんで」
「俺を満足させられるだけの大金がどこにある」


やはりそう来るか。
でもお金なら大丈夫。そもそも金も無しに、こんなやつに依頼するわけない。


「1000万、でどう?」


1000万、と言った瞬間、伏黒の目が少し大きくなる。
それを見て私は心の中でガッツポーズをする。


「……依頼の内容は何だ」
「今日から8月末まで、一切の依頼を断ること。それだけ」
「はぁ?それだけ?何か裏があるんじゃねぇだろうな」
「ない」


伏黒甚爾は得心のいかないような顔つきだ。

まあこんな依頼内容で、しかも呪術高専生からの依頼となればこうなるのも当たり前か。
お金が本当に支払われるのかも怪しいだろうし。


「仮に裏があるなら、あなたが私を殺せばいい話でしょ」
「まぁそうだな。……いいぜ。ただし条件付きだ」


伏黒はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

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作者名:穂波 | 作成日時:2021年11月20日 22時

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