3の世界【鎮魂歌】 ページ43
朝。
ゾンビみたいに意味もなく徘徊する船員を気にしながら、船の舵をとり島に取り付けた。
夢子ちゃんは見知った船員達を置き去りにする事をとても気にしていたけれど、降りた街の中を見て仕方ないと諦めたみたいだ。
街の人はゆらゆらと身体を揺らしながら、意味もなく歩き回っていた。…ちなみにあんまり近寄ると噛みつかれる。
一応船を街につけたので、後は夢子ちゃんの学校へ向かうだけだ。
これ以上夢子ちゃんにスキルを見せるのは駄目だとロシアに言われたので、夢子ちゃんの世界でもメジャーだったらしい魔法の乗り物を用意した。
「魔法の空飛ぶ絨毯…!アラジンのような経験が出来るなんて素敵ね!」
ハンガリーが凄くはしゃぎながら絨毯に乗った。皆座れるかちょっと心配だったけど…大きめの絨毯だし大丈夫そうかな。
魔法使えない組は絨毯に乗り込み、魔法使える組は自分で空を飛ぶ。
女の子三人、フランス、スペイン、日本は絨毯に。
私、ロシア、アーサー、アメリカは自分の道具等を使った。
私は勿論箒だし、アーサーは蝙蝠羽を生やして広げてマジヴァンパイアな感じだし、アメリカは空飛ぶマントをつけてスーパーマンくさい感じだった。
問題はロシアかな。
彼は禍々しい影を操り作った黒い道の上に、玉座みたいな椅子を作って腰掛けている。
空飛ぶ漆黒の玉座に何故か目玉がギョロギョロついてて怖い。
夢子ちゃんが「まじ魔王様」と呟いていたけれど、本当にそれな。
遥か下の方にある黒い道に歩いてた人が、影に飲み込まれて消えてるように見えるのはきっと気のせいだ。…気のせいだよね?
「新鮮なお肉がいっぱい手に入ったから、今日のお昼はバーベキューにしてくれよ!」
「あ、アメリカさん…」
「なんだい夢子?骨付き肉は嫌いかい?スパイス使ったり皮をよく炙ったりすれば丸ごとでも美味しく食べれるんだぞ」
「丸ごと!?」
多分アメリカが言ってるのは先程街で手に入れた牛肉とか豚肉の事だろうけど、このタイミングで言うから人の肉だと思われているようだ。
ロシアは恐らく気付いていながら「彼はいつも食べてるんだよ。気を付けてね」と夢子ちゃんに言った。
「?確かにいつも食べてるんだぞ!(※牛肉の事)」
「そ、そっか…いつも…か…(※人肉の事)」
やばい感じに勘違いされているけど大丈夫かHERO。人食べるHEROは怖いんだけど。
アホな騒動を余所に、ロシアもちは露語で鎮魂歌を唄っていた。
死んでないよ!縁起悪いよロシアもち!
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作者名:ヴァーニャ | 作成日時:2017年3月10日 0時