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restart#3 ページ41

だけど、叶さん本人がまだわたしと居たいと思ってくれるなら、もう一度帰りたい。

「叶さんは、どう思ってる?もしもわたしが……わたしがまたライバーに戻るなら、叶さんは……______」


どうしてもそこから先は口には出せなかった。

優しい叶さんなら、わたしがした質問に対して、きっと肯定的な答えしか出さないと思ったから。

わたしが叶さんに気を遣わせてしまうのが、そして嘘を吐かれるのが怖かったから。


「ねえ、帰ってきてよ、A」


叶さんがぽつりと呟いた。


「……叶さん?」

「帰ってきなよ。やめるなんて絶対に言わせない。僕のいるところがAの帰る場所でしょ。Aがライバーやめるのは、僕がめる時。僕と事件なんかとじゃ比べ物になるわけないじゃん」

普段より語気が強い叶さんの言葉にごくりと息を飲む。

「僕が戻ってほしいって思ってるんだよ。Aは?戻りたい?」


ベンチの上に放っていた手をいつの間にか強く握っていた。

迫られた選択に、汗ばむ手のひらを再びぎゅっと握りこむ。




「わたしは……わたしも、戻りたい。戻りたいよ」


そう言ったわたしの声は震えていた。

どうしてかは、分からない。

けど、少しだけ不安だったのかもしれない。本当に自分が正しい道を選んだのかなんて分からないから。



「よく言えました」


わたしの返事を聞いた叶さんは、満足げに笑った。

それだけで、不安なんて消し飛ぶようだった。

子供にするみたいに頭を撫でられる。


確証はないけど、わたしの選択は間違いなんかじゃなかったと思う。

どんなことがわたしの身に起こってもわたしはまたここに戻ってきてしまうんだって、なんとなく感じた。

帰巣本能?強いて言うならばそんな感じだと思う。


次は、わたしが君の帰る場所になるよ。

口にはしないけど、そっと心の中で呟いた。

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作者名:芳野 | 作成日時:2022年3月31日 22時

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