占ツク作者でシェアハウスしようとしたら能力貰った上に非日常が続きます【短編】

【美坂るう】私の大切な ページ23

蒼華碧璃、それが私の名である。人とかかわるのが苦手、と自分でもわかっているのだが、治そうにも今更治らない。
この騒がしいシェアハウスの中にいることは私にとってかなり面倒なことだったのだが、今となっては慣れ始めている。



「お前は可愛いよ」



部屋でこっそりと育てているネペンテスの口に切り刻んだ肉片を投げ込みながら私は呟いた。食虫植物が話すわけがないので当然ネペンテスは返事をしないが、愛情を注いでいればそれで満足できた。



「あのー」
「……どうしたの？」
「あぁ、あの、この本は貴方の本ですか？」



バルコニーのほうから、人の話し声が聞こえてきた。恐らく、男女の会話であろう。男のほうは間違いなく307号室の住人、暦代空李のものであるはず。女のほうが誰であるかは、声だけでは判別することが難しかった。



「……誰だと思う」



私はネペンテスの鉢を抱きかかえるようにして問いかけた。返事をしない彼、もしかしたら彼女かもしれないが、その口の中を覗き込むと、先ほど与えた肉片がゆっくりと溶けていくところだった。
結局会話をしている男女の女のほうは103号室の花崎朗である、と私は声の音程だけで結論付けた。



「そうだよ」


本のことだろう、暦代空李が花崎朗の言葉を肯定する返事の声が聞こえた。

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