焦燥 ページ7
「はい、袋はこちらでよろしいでしょうか？」
「あぁ。それで頼むよ」
「かしこまりました。彼女さんへのプレゼントですか？ふふっ」
「っ……いや、まあ……そんなところだ」
(やはりこんないい歳した男が女物のルームウェアを買いに来るのはおかしなことだったか……)
若干の後悔をしながらも店員の生暖かい視線に咳払いをしてごまかす。
「お待たせしました〜！リボンのお色はどれに致しますか？」
「……では、ピンク……いや、紫で頼むよ」
「かしこまりました！」
(これで少しはわたしを意識してくれるだろうか。まぁ……いきなりこんな物を貰っても困るだろうが……クリスマスプレゼントだという事にしておこう)
彼女がもし、わたしがあげた物を身につけてくれたなら、どれ程幸福な気持ちになれるだろう。
その姿を想像すると、また昂ってしまいそうなので考えるのをやめ、その日は大人しく家に帰ることにした。
彼女も流石に毎日働いている訳では無いので、レジに行っても会えない日が多い。
働いていたとしても勤務時間の問題もあり、わたしの休憩時間、退勤時間に彼女が所用でレジに立っていない事もある。
なので、事前に彼女がいるかどうか確認し、いなければ買い物をしなかったり、別の店で済ませたりもしているが、暫く彼女のあの笑顔が見られていない事で精神は乱れていた。
(もう一週間も会えていない……またすれ違ったか？)
いつでも渡せるようにと鞄に入れたままのプレゼントは、少し潰れてしまっているようにも見える。
中身が布製品なので問題は無いが、自身の疲弊していく心を表しているようで忌々しかった。
「吉良、最近疲れてるんじゃないか？顔色も良くないぞ」
「あぁ……ちょっとね。少し気分が優れないだけさ……」
「そうなのか。まぁ……あんまり無理するなよ」
心配げに顔をのぞき込む同僚に空返事を返しながら、今日も彼女を画面越しに見る。
ダメだと分かっていながらも1枚だけ撮った彼女の写真。
携帯のカメラのズーム機能で無理やり撮ったものだから解像度は悪いが、それだけが唯一の慰めだ。
(Aさん……Aさんに会いたい……)
声が聞きたい。笑顔が見たい。あの柔らかい手で触れて欲しい。
もはや彼女の存在が、生活のサイクルの中に欠かすことの出来ないものになっている。
(早く彼女をわたしのものにしなくては……)
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アーディ(プロフ) - 餡さん» コメントありがとうございます！本当はもっと短く纏めるつもりだったので、間に合うか間に合わないかの瀬戸際でヒヤヒヤしながら書いておりました。吉良さんの魅力が伝わっているなら何よりです。最高の褒め言葉ありがとうございます！読破お疲れ様でした！ (1月31日 13時) (
レス) @page42 id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)
餡(プロフ) - 完結おめでとうございます。まさか吉良さんの誕生日に合わせて執筆されていただなんて…！細密な描写が色んな視点で描かれていて、とても面白かったです。本当に吉良吉影という人物の魅力がたくさん詰まった作品だと思います。素敵な物語をありがとうございました…！ (1月31日 8時) (レス) @page42 id: 493b9f8f47 (このIDを非表示/違反報告)
アーディ(プロフ) - ゆーりさん» くそっ……じれってーな。俺ちょっと2人を進展させてきます……！(コメントありがとうございます！作者的にももどかしいです！！！) (1月26日 22時) (レス) id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーり(プロフ) - あー！！！もどかしい！ドキドキしますね…！！！ (1月26日 16時) (レス) @page32 id: bb43593a3a (このIDを非表示/違反報告)
アーディ(プロフ) - のんさん» ありがとうございます、先はまだちょっと悩んでますが、更新頑張りますね！ (1月11日 21時) (レス) @page9 id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：奇妙な前髪 | 作成日時：2024年1月8日 23時
