Break Down ページ40
「……ッ！夢オチ……じゃない。ここは、一体……？」
いつの間に気絶していたのか、目が覚めた時には知らない部屋にいた。
特に拘束されたりはしていなくて、服も乱れていない。
吉良さんが近くにいないことに少し安堵しつつ、周囲を見回した。
パッと見は和室のようで、日当たりがいいのか障子から光が差し込んでいる。
壁に掛けられた賞状や箪笥の上のトロフィーが群れをなすように飾られていた。
「どれも三位の……あ、れ……？」
その壁に掛けられた、一枚の額縁。
中には解像度の低い私の写真が入っている。
「あぁ、起きたかい？」
写真に伸ばした手に重ねられる、男の人の手。
「吉良、さん……」
「乱暴な真似をして悪かったね。どこか痛む所はないかい？」
酷く優しい声が耳許に落とされる。
いつもとは違う意味で脈が早くなり、恐怖で体が冷えていく。
今すぐここから離れるべきだと脳が警鐘を鳴らした。
「痕は……ついていないね、良かった。君がわたしの部屋にいるなんて、夢のようだよ」
私の手を取って、それに口を寄せるのが見える。
そっと指に口付けられ、伏せられた睫毛と優しい眼差しに思わず息を呑んだ。
「これから君はここで暮らすんだ。心配ないよ。身の回りの世話はわたしがしてあげるからね」
「あ、の……」
「ン？ああ、そうだね。わたしだけ君の名前を知っているのは不公平だ」
手を縛られている訳でも、足を折られている訳でもないのに、彼の動きに抗うことが出来ない。
そのまま手を引かれ、いつの間にか吉良さんの足の間に座らされてしまった。
「わたしの名前は吉良吉影……ほら、呼んでごらん？……よ、し、か、げ」
上顎と下顎を捕まれ、無理やり口を動かされる。
力加減というものを知らないのか、強く捕まれ過ぎて痛みを覚えた。
「ん……ッぐ、ぅ」
「あぁ、そんなにかわいい声を出さないでくれ……」
突然、顎を掴む力が緩まり、解放される。
恐怖で声が音にならない。
かひゅ、と漏れた息を吸い込むように、吉良さんは私に口付けた。
「わたしは君の手も、足も、声も心もぜんぶほしいんだ」
先程とは違って優しく頬を撫でられる。
私にはそれが獲物を目の前にした肉食獣のような、酷く恐ろしいものに見えた。
「震えているのかい？可愛いね。わたしが恐ろしい？逃げ出したいのかな？」
私を包み込むように抱きしめた彼は、愉しげに囁く。
「絶対に、離さないよ」
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アーディ(プロフ) - 餡さん» コメントありがとうございます！本当はもっと短く纏めるつもりだったので、間に合うか間に合わないかの瀬戸際でヒヤヒヤしながら書いておりました。吉良さんの魅力が伝わっているなら何よりです。最高の褒め言葉ありがとうございます！読破お疲れ様でした！ (1月31日 13時) (
レス) @page42 id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)
餡(プロフ) - 完結おめでとうございます。まさか吉良さんの誕生日に合わせて執筆されていただなんて…！細密な描写が色んな視点で描かれていて、とても面白かったです。本当に吉良吉影という人物の魅力がたくさん詰まった作品だと思います。素敵な物語をありがとうございました…！ (1月31日 8時) (レス) @page42 id: 493b9f8f47 (このIDを非表示/違反報告)
アーディ(プロフ) - ゆーりさん» くそっ……じれってーな。俺ちょっと2人を進展させてきます……！(コメントありがとうございます！作者的にももどかしいです！！！) (1月26日 22時) (レス) id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーり(プロフ) - あー！！！もどかしい！ドキドキしますね…！！！ (1月26日 16時) (レス) @page32 id: bb43593a3a (このIDを非表示/違反報告)
アーディ(プロフ) - のんさん» ありがとうございます、先はまだちょっと悩んでますが、更新頑張りますね！ (1月11日 21時) (レス) @page9 id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：奇妙な前髪 | 作成日時：2024年1月8日 23時
