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目の前にキラキラと広がる照明。都会の大会場には劣るものの、こっちだって負けちゃいない、ちゃんと役者を引き立てる。

手元は小さなライトで照らされていて、いろんな紙や操作盤が見えること見えること。でも、照明明るすぎて、もう要らない気もしてきた……

【一旦ストップお願いします】

あ、演出家さんの指示だ。

停止ボタンを押して音楽を止めたのとほぼ同時に、動き回っていた照明がピタリと止まる。視界の隅にその正常な動きを確認。正面で皆さん、何か相談事だ。

チーフが後ろに下がったので、マイクを渡したんだけど、うん、問題なく動いてるみたい。役者と演出家が動きの相談中っぽいので、こっちも少し伸びをして、と。

遠目から見るステージ、やっぱり、知る顔が一つ。

『事実は小説より奇なりってか……』
〈どうした〉
『あ、いいえ何でも。そちらは問題ありませんか?』
〈おうよ。機器も体調も万全よ!!〉
『はーい』

独り言が思いっきり漏れ出ていた、危ない危ない。苦し紛れにごまかすついでに、一応の確認、大丈夫そうだったけどね。

にしても、今日一日だけで、このハプニングの起こりようだな。まさかの役者さん、命の危機に、突然の音響仕事。ほんと、小説より奇なりって感じだよ、全体的にさ。いや、一部は自業自得じゃねぇか。

【じゃあ、さっきと同じところからお願いします。よーい】

明後日に向いていた視線と思考を戻す。合図とともに操作盤の上で、指を滑らせる。練習は本番のように、本番は練習のようにとかなんとか、よく言われてましたよっと。

手元を見つつ、舞台も見つつ、忙しく目も手も頭も動かしながら、心の中で独り言ちた。

きらびやかな衣装を身にまとい剣、いや刀を振り回しているあこがれの人を見ていると、生意気な心が少し、いや、大分ちくちく傷んでいるような錯覚に陥る。

気のせいだと思いたかったとか思うけど、やっぱ練習は続くので、忙しいからそう考えてる暇も無いんだな〜これが。

【ここ、もう一回だけやっていいですかね】
『だいじょうぶでーーーす!!!』

さっきとはまた違うところの練習に進む。といっても、今やってるのは場所の確認とか、タイミングの確認とか、すごく最終段階の作業なんだろうな。

やっぱり、学生レベルとは桁が違いますって。

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Canon(プロフ) - * haru *さん» コメントありがとうございます!! (2020年8月1日 7時) (レス) id: 930afbe674 (このIDを非表示/違反報告)
* haru *(プロフ) - 健介さんの小説を探しておりました…!出会った二人のアワアワした空気感がとても微笑ましいですね、、素敵なお話をありがとうございます!コミカルな主人公さんも素敵です!! (2020年7月31日 1時) (レス) id: 91042359bd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Canon | 作成日時:2020年6月23日 23時

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