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街外れののどかな村の一角にある、行きつけの万屋にて私は少し困っていた。
「すまないねぇ魔女様。3日前に商人が魔獣に襲われて全く売り物が届かなくてな。前に買っていった天然石で最後なんじゃ」
目の前にいる店主の老人は困ったように自慢の白く長い髭を撫でながらそう言った。
...うーん、実に困った。これじゃあ注文してくれた魔道具を作ることが出来ないな。約束の時間は今日の夕刻までなのだが、ここに材料が無いとなると自分で採取しに行くか、他の店をあたるかの二択となる。
自分で採取に行くのは時間も労力も掛かるしあまり現実的ではないだろう。となると
『おじさん。この近くに天然石を売っている店って聞いた事ある？』
「いや〜、この村で天然石を仕入れてる店はうちだけじゃ。どーしても欲しいなら隣町にある仕入先の店に行くしかないじゃろう」
『分かった。隣町へはどれくらいかかるの？』
「...魔女様、本当に行くのかい？」
店主は先程までの困った様な面持ちから深刻そうな顔をして改めて私に問いかけた。
『うん。注文に間に合わないからね』
「...はぁ。理由がそうであるといくら言っても魔女様なら聞かないだろうからな。では私から一つ忠告をしよう」
『忠告？天然石を買いに行くだけなのに？』
「あぁ。隣町は王都から流れてきた汚染水によってこことは違って周辺の環境が悪いのじゃ。それも相まってか治安もあまり良い方ではない」
「魔女様はべっぴんさんじゃからな。くれぐれも人攫いとスリには気を付けてくれ」
...なんだ、そういう事か。でも私はこう見えてかつてこの国を乗っ取っていた魔族を倒したパーティーの一員だ。それにこの村の防衛だってこなしている。その程度のものに私は屈しはしない。
『忠告ありがとう。でもきっと大丈夫だから。それじゃあ』
私は素早く箒にまたがると、周囲に風が吹き荒れ、あっという間に高度を上げて隣町へ向かって飛んで行った。
...約束の時間までに間に合うといいのだけれど。
「...確かに、いつも村を守ってくれている魔女様なら要らぬ忠告だったかもしれぬな」
そんな店主の声は去っていった風と共に消えていった。
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作者名：ふぁる | 作成日時：2023年11月25日 13時
