Candle / Hokuto.M (ページ2)

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夏の匂いを背負って、緑は青々と広がる。
蝉の規則的なようで不規則的な鳴き声が町一帯を賑やかにする。
と同時に、暑さを余計に感じさせるような鳴き声だった。

自分が住んでる町は大き過ぎず、小さ過ぎず、大きな川が中心を流れてるところだった。
生活するのに不便なことはなくても、やはり東京みたいな都会に少なからず憧れをもつ人がほとんどだったと思う。

蝉が鳴いて、夏が震える。

『北斗、私アイス食べたい』

ぽてっとした赤い唇が自分に向かって動く。
暑さのせいで少しだけ汗ばんだ肌はほんのりピンクがかってた。

「あともう少しで家着くけど？」
『食べないと帰れないです、帰りません』

行こうよ〜って楽しそうに引っ張られれば断ることなんてできない。
断れる人がいるなら教えてほしい。
楽しそうに歩くローファーが愛おしい。

オレンジのアイスともうひとつ何かに悩んでるみたいだったから、どうするの？って聞けば、
一緒にパピコ食べてくれる？って可愛く聞かれる。

答えにはなってないはずなのに。
全てが愛おしく、茹だるほどだった。

『…あ！』
「ん？」
『今日お母さんお仕事で帰るの遅いって言ってた』
「じゃあ俺ん家くる？」

『いいの？』

「駄目って言ったことある？」

『ありがとう』

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ご飯を食べ終わって、ソファでiPhoneを弄びながらテレビを流し聞きしていたらインターフォンが鳴る。
はーい、っていつもなら出さないようなワントーン高い声でパタパタスリッパを鳴らす。

しばらくドアが開く音が鳴り、さっきのスリッパの音とは違う、トタトタ歩く音が聞こえる。

『…北斗？』
「…おー」

実は気づいてたけど。なんとなく期待してたのがバレたら恥ずかしいから、何も気にしてなかったフリで声を出す。
これは思春期の男子特有なのか？

『…おじゃまします』

小さい頃から何回も来てるはずなのに、
ソファに座る瞬間は毎回緊張してるのか、そーっと座る。
制服はいつの間にか着替えていて、家が近いからいいものの、いつでも寝られるような服を着ていた。

…男子高校生からすると、少し考えてしまう。

『北斗返ってきたテスト何点？』
「あー何点だろ、国語が90、数学が」

『まってまって！』

慌ててiPhoneを出してメモの準備をする。
同時に母親から出された麦茶に気づいて、ありがとうございます！って笑顔で言う。
他の人に向けた笑顔でドキッとするのは重症なのかもしれない。

茹だるような暑さと、遠くでめんどくさそうに蝉が鳴く。
全て夏のせいかもしれない、そう思うことにした。

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