おかえり、青春 (ページ14)

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「他に知りたいことないの？」

『知りたいことー？そうだなぁ…

逆に北人は？知りたいことないの？』

チャプン

北人がお湯の中で動いた音

なぜだかわからないけど、北人がいるって確認できたみたいで涙が出てきた。

「知りたいことね…あ、なんで保健室の先生しようと思ったの？」

『えー？なんでって…
あの時、助けてくれたの保健室の先生だったの。

北人が、いきなり居なくなって

どうすればわかんなかった時に、先生が寄り添ってくれて立ち直れたから。

だからわたしも、誰かの力になりたいって思って』

「ふふ笑Aらしいよ」

『北人は？向こうでは無職なの？』

「うーん、向こうってだいたい物タダなんだよね」

『そうなの？！いいな～』

だから天国って言うのかな、そんなことも少し考えた。

「でも、やっぱりみんなどうしてるかな～って寂しくなったよ～、」

『みんな、寂しかったよ。壱馬なんて北人が事故に遭った時暴れ狂ったし、翔吾も号泣どころじゃなかったし、晴季も唯乃も、みんな…泣きまくったよ』

「俺ね、Aの声だけ聞こえたんだ。」

『え？』

「行かないでって、死ぬ間際に」

『そうなの？』

北人が死にそうになってる時、混乱しすぎて涙も出なくて

“ねぇ、北人行かないで”

って力なく言った気がする。

「なんかわかんないけど、俺死ねないのにな～って思った。A置いてったらAが死んじゃいそうだし」

『はは笑まじで死にそうだったよ』

「置いてってごめんね」

『なに言ってんの、戻ってきてくれたじゃん。』

「…ただの自己満に過ぎないんだけどね」

『…どういう意味？』

「ううん、なんでもない。」

『北人…消えたりしないよね？？？』

答えはなかった。

その質問に深い意味などなくて、ただ純粋に

“消えないで”

って気持ちが強くて

“消えないよ”

って言葉が欲しかった。

「俺、髪とか洗うね。」

『あ、うん。そこにあるシャンプーとか自由に使っていいからね。タオル置いとくよ』

「ありがと」

わたしはタオルと着替えを置いて、静かに脱衣所を出た

「……今日無事にやり過ごせるかな」

北人が呟いてることなんて知るはずもない。