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-Hokuto side
その日、久し振りにAの夢を見た。
夢の中で、記憶と変わらない姿の彼女は、僕に向かって微笑んだ。
A「北ちゃん。」
僕の大好きな声で。
僕の大好きな笑顔で。
A「別れよう。」
君は、僕にそう言ったんだ。
Aが一度決めたら考えを覆さない性格だってことは分かっていた。
だから、僕はただ一言こう言ったんだ。
分かった、と。
Aが僕にそう言うってことは、なにか理由があると思ったから。
…Aが、決めたことだから。
そうやって自分を納得させた。
僕から始めて、Aが終わらせた。
でも、僕の中ではまだ終わっていない。
まだ好きなんだ。
忘れられないんだ。
芸能界に入って、色んな女性に出会った。
正直、Aより綺麗な人もいた。
だけど、心が動かない。
新しい恋を始めようと思っても心が拒否する。
この4年間、Aのために歌ってきた。
ずっと君を思っていた。
A、見てくれてるかな。
今会ったら、君はどんな反応をするんだろう?
僕の好きな笑顔で笑ってくれるのかな。
君が僕の名前を呼ぶ声が好きだった。
もう、あの頃には戻れないの?
戻りたいって思ってるのは、僕だけ?
…きっと、そうだよね。
Aは、僕に頼まれて付き合ってただけだもんね。
結局、Aには一度も好きだと言われたことは無い。
僕はAのことを振り向かせられなかった。
Aが戻りたいって思う訳が無くて。
…僕、どれだけ自分に都合のいいように考えてるんだろう。
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作者名:直実 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/naomi_shogkazu
作成日時:2019年4月28日 17時