39 ページ41
-Hokuto side
誕生日から1週間。
今日はホワイトデーだ。
バレンタインのお返しに、僕は指輪を送ろうとしていた。
いつも通り、病室のドアを開ける。
そこには、ベッドの上で上半身を起こしたAがいた。
北人「A、良かった!
目、覚ましたんだね!」
思わず駆け寄って、その身体を抱き締める。
A「や…っ!」
…え。
Aの顔を覗き込む。
その目には、怯えの色が浮かんでいた。
A「どちらさまですか…?」
北人「え…。」
医者「ああ、吉野さん。
ちょっと来ていただけますか?」
北人「…先生。」
医者の後に続いて、外に出る。
北人「どういうことですか?」
医者「一時的な記憶喪失だと思われます。」
北人「…記憶は戻るんですか?」
医者「保証はできません。
もし記憶が戻ったとしても、記憶を無くしていたときのことを忘れる可能性もあります。」
北人「そんな…。」
打ちひしがれながら病室に戻る。
Aが顔を上げた。
北人「さっきは驚かせてごめんね。
…入ってもいいかな?」
A「…どうぞ。」
北人「ありがとう。」
中に入って、椅子に座る。
A「…すみません、私記憶喪失なんです。
だから、貴方のことも覚えてません。」
北人「…本当に、何も覚えてないの…?」
A「…はい。」
北人「そっか。じゃあ、自己紹介からかな。
吉野北人です。
THE RAMPAGEってグループで、ボーカルしてます。」
A「…北人、さん。」
胸が締め付けられた。
目の前にいるのは、Aのはずなのに。
なのに、呼び方が違うだけで違う人に、全く知らない人に思える。
A「私とどういう関係だったんですか?」
北人「えっと…。」
恋人。
本当は、そう言いたかった。
だけど、いきなりそう言ってもきっとAは戸惑うだけで。
だけど、嘘は吐きたくない。
A「…北人さん?」
北人「ああ…、ごめん。
えっとね、中学と高校が一緒だったんだ。」
A「友達だったんですか?」
北人「友達…。んー、ちょっと違うかな。」
A「え?」
北人「僕ね、Aのことが好きだったよ。」
これは、1つの賭けだった。
こう言えば、もしかしたらAが僕のことを思い出してくれるんじゃないかって。
A「…そう、だったんですか…。
私は、北人さんのこと好きでしたか…?」
北人「っ!」
A「…。」
Aは僕の反応を見て頭を下げた。
260人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「THERAMPAGE」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:直実 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/naomi_shogkazu
作成日時:2019年4月28日 17時