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-Hokuto side
陸さんと一緒に店を出た僕は、店の外でAを待っていた。
閉店時刻は午後8時半。
9時を少し回った頃、ドアが開いてAが出てきた。
A「お疲れ様です。」
僕を見て、その足が止まる。
A「…北ちゃん。」
僕の名前を呼ぶAは、この4年の間にぐっと大人びて、綺麗になった。
…やっと、会えた。
北人「…ずっと会いたかった。」
Aに近付いて、そっと彼女の頬を撫でる。
北人「…僕、まだAのこと好きだよ。
この4年間、ずっとAのこと考えてた。
…もう一度、僕と付き合って欲しい。」
Aの瞳が揺れる。
Aはそっと僕の手を外した。
A「…ごめん。私…、彼氏おるけん。」
北人「…そっか。」
そうだよね。
…A、美人だしね。
北人「…ごめん、急に。」
A「ううん。」
北人「…じゃあ、僕帰るね。」
A「…うん。じゃあね。」
僕はAに背を向けて、歩き出した。
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沈んだ気持ちで家に帰る。
北人「…ただいま帰りました。」
瑠唯「あ、北ちゃんおかえり。」
笑顔で迎えてくれたのは瑠唯さん。
北人「…瑠唯さん…。」
瑠唯「うわ、どうした?」
北人「…Aに振られました…。」
瑠唯「えっ?会ったの?」
北人「今日、陸さんとたまたま入ったカフェにAがいて。
もう一度僕と付き合ってって言ったら、もう彼氏いるからって…。」
瑠唯「…そっか。それは辛いね。」
瑠唯さんが僕の背中を撫でる。
今まで堪えていた涙が一気に溢れた。
北人「るいさ…っ、僕ずっとAのこと好きで…っ。
別れてからもずっとAのこと忘れられなかったのに…っ!」
瑠唯「…うん。」
北人「僕は、Aが幸せならいいって思ってたのに…、Aの隣に僕以外の男がいるのは嫌なんです…!」
瑠唯「…それでいいと思うよ。」
北人「…え?」
瑠唯「無理に諦める必要なんて無いよ。
北ちゃんはまだAちゃんのこと好きなんでしょ?
いつか北ちゃんに別の好きな人が出来るまで、Aちゃんのこと好きでいたらいいんじゃないかな。」
北人「っ!」
瑠唯さんの言う通りだ。
Aの笑顔が、僕に向けられることはきっともうない。
それでも、彼女を思い続けるのは自由だ。
北人「…ありがとうございます。」
瑠唯「うん。」
僕は頬を伝う涙を拭って頭を下げた。
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作者名:直実 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/naomi_shogkazu
作成日時:2019年4月28日 17時