ねこといぬの恋の話 (ページ15)

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「あ、おはようございます」

出た、営業スマイル。

彼はキラキラと効果音がつきそうな笑顔で
事務員の女の子に挨拶を返す。

『おはようございます』

その隣で、無愛想な挨拶を返す私。

本当に、正反対だな。

「松村さんと中野さん
仲良しなんですねぇ」

しれーっと隣を歩いて
私と彼の仲を探るように話しかける彼女。

「うん、まあ同期だし」

あれ、意外と無難な返事をするんだな。

と彼の方をチラリとみると

私にしかわからないように少しだけ微笑んだ。

その笑顔の意味はわからなかったが

「あっ、まあ、そうですよねー
私も同期とは仲良いですー」

彼女も特にそれ以上は探ることなく終わってホッとした。

「嫌でしょ、ああいうの」

席に着くと、彼がこっそりと
私にしか聞こえない声で話しかけてきた。

ああいうの、とは多分
先程の事務員の彼女との会話のことだろう。

『まあ、得意ではないかな』

「よかった」

もしかして、私があの手の会話が苦手だと思って

ああいう返事をしたのかな。

『ありがとう』

真相はわからないけど、あの時の笑顔も
そういうことなのかもしれないな

とお礼を言うと

「どういたしまして」

彼はどこか満足気にパソコンの電源をつけた。