ねこといぬの恋の話 (ページ12)

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、

「ね、連絡先教えて」

『あれ？知らなかったっけ』

階段のところで別れようとすると

松村くんがスマホを取り出す。

確か、入社当時に同期だけで
飲み会をして、その時に

みんなと連絡先を交換したような。

数年前の記憶を思い返していると

「Aは

こーちと樹としか連絡先交換してねぇの」

『そうだっけ』

そうだそうだ。

他の人たちとは連絡を取ることもないだろうと
思って、

こーちとだけこっそり交換してたら

田中くんがその場に居合わせて、というか

その場にやってきて
彼とも連絡先を交換したのだ。

「明らかに他の人たちとは
交換したくなさそうだったし

さすがに聞けなくって」

"そしたらその後の同期飲み会は一切来ないし"

って。

いろんな支店に散らばっている同期が
集まるとなると少し都心に出ないといけなくて

…ちょっと面倒で断ったんだよな。

私の時は女子の同期も居なくて
男の子ノリみたいなのもあるだろうから

私あんまり居たいほうがいいかなーって
そんな気遣いもあったんだけど。

「人伝に聞くのも気が引けるし

やっとチャンスが来たんだよ」

「だから、頑張るわ」

じゃあ、おやすみ

とそんなに優しい顔で

ストレートに思いを伝えられて

顔が赤くならない訳がない。

おかしい。どちらかというと
苦手な部類の彼に

ドキドキするなんて。