ジョングク栽培キット【JK】

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以前はヒョンの膝の上にちょこんと座り、興味もない僕らの会話を聞きながら、大人しくぬいぐるみを撫でていた。

いよいよ飽きてきた頃、まったく関係ない話題で割って入ってきて、





“ほそくは、めだまやきに なにかける？わたしはねー、ぺちゃっぷ。ゆんぎは しおなんだよねー。

でもこのまえ、ぺちゃっぷで はーと かいてあげたら、ちょー にやにやして たべててねー、”





おしゃべりが止まらなくなると、少しの間黙ってろって棒つきキャンディを口に突っ込まれてたっけな。

それが今じゃ逆か、なんかエモいな。





「いいから向こう行ってろって」

「なによツンケンしちゃって。煙よりイチゴ味の方が美味しいに決まってるでしょ？」

「これ甘すぎて顎外れそうになんだよ」

「とか言いつつ、いつも最後まで食べきるクセにぃ」

「…………うるせぇな。ハウス」





眉間に皺を寄せ、バツの悪そうな顔。

2人の関係性は変わってなさそうだった。





「僕は別にここにいても構わないよ。全然気にならないし、むしろ、」

「ううん、いいのいいの。くたびれ研究者の家はやるべき家事がこんもり溜まってるから、今のうちに終わらせちゃわないと。ほそく、ありがとね」





肩をすくめそう言って、ソファーの背もたれに掛かるシャツや靴下やらを拾い上げ、ひらひらと手を振って部屋を出て行く。

てっぺんに生える可憐な一輪を、ふわり柔らかく揺らしながら。





「今日ホソギを呼んだのは他でもない。お前に頼みがある」





深煎り豆の良い香りが交差するテーブルの中央に置かれた、ひとつの白い鉢植え。

可愛らしい男の子のイメージ写真が雑に貼られたそれは、店で毎日のように目にする物とは違う、明らかに開発途中の未完成品だった。





口を一の字に結んで口角を無理やり上げるヒョンはこちらの反応を伺ってから、顔の前で手を合わせて頭(こうべ)を垂れる。





「あ、僕分かる。コレ面倒ごと任されるやつだ」

「おぉ〜話が早くて助かる……！やはり持つべきものはホ、」

「OKとは言ってないですよ？察してしまっただけで」

「タダでとは言わん。そうだな、高級焼肉でどうだ」

「霜降りネギタンにザブトン、厚切りランプ。あーそれだけじゃ足りないなー」

「………………A5のシャトーブリアンとしっかりデザートも付ける」

「そうこなくっちゃ」


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