今日もこの森の中で【ALL】 (ページ14)

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単刀直入に言おう

お腹が痛い

カフェから1番近い、エスカレーターを登ってすぐの所にあるトイレの手洗い場に片手をついて項垂れる

昼休みが終わってまだ1時間半程しか経っていないというのに、たった今休憩後通算3回目のパレードを終えたところだ

何か変なものでも食べたか？

そんなこたぁ愚問だ、理由なんてひとつしかない

「どう考えたってさっきのユニコーングミだ」

テヒョンイめ、私の胸を爆発させたと思ったら時間差でお腹まで爆発させてくるなんて

一度ならず二度までも仕掛けてくるとは全くどこまで罪な男なんだか

とはいえ、ひとまず落ち着いたお腹に安堵する

持ち場に戻ろうとすると、耳あたりの良い柔らかいピアノの音が聴こえてきた

どこか切なさを感じる綺麗なメロディー

この音はそうだ、ユンギオッパ

楽器屋の店先にあるピアノの椅子に腰掛ける猫背ぎみの背中

彼の視界に入る所まで戯けた動きで近づくと、顔が上がって視線が絡む

つぶらな瞳を瞬きさせるものの、表情筋のひとつも動かさない

何か言ってくれてもいいでしょうに

「𝐼 𝑁𝐸𝐸𝐷 𝑈？」

『𝑆ℎ𝑎𝑙𝑙 𝑤𝑒 𝑑𝑎𝑛𝑐𝑒？みたいに言うなよ』

「へへ。オッパもこの曲知ってたんだね」

『まあな』

弾いていたのは有名なグループの曲

彼がこの曲を知っていること自体意外だったのに、弾けるなんて驚きだ

基本ぼーっとしてしていることが多いが気まぐれにこうやってピアノを弾いていることが時々あって

賑わう週末に弾けば人が集まり、駅なんかにあるストリートピアノ状態になることもしばしば

本人は愛想気もなくどこか気だるげに淡々と鍵盤をはじく

逆にそれが魅力的なのか、女子高生がスマホを向けて騒いでいるのをよく見かける

「ジンくんと次の例会いつにしようってグループトーク途中だったよね。どうする？」

『週末じゃなければいつでも。お前もどうせ仕事終わったらやることねーだろ』

「ぐぅ……」

『ぐうの音は出ないもんなんだよ』

ジンくんとユンギオッパと私は所謂飲み仲間でもあり、例会と称して定期的に飲み会をしている

新しい店の開拓をする時もあるが、結局いつもの場所が落ち着く、と2人が大学時代にバイトしていた小料理屋で飲むことがほとんど

ここからそう遠くはない所にあるし店内の雰囲気も良く、店のおばちゃんも気前がいい

何より料理もお酒も何を取っても美味しい

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